これは誰も注目していないが、最も興味深い経済ニュースだ。
ここ2カ月間、米国によるイランへの攻撃が国際市場を揺るがしている。これにより、エネルギー価格が急騰し、石油から肥料に至るまで、あらゆる商品の供給網に大きな変動が起きている。こうした状況下で、多くの国が経済の活力を維持することだけでなく、財政の健全性を維持することにさえ苦慮している。しかし、1カ国だけ例外がある。
イスラエル紙タイムズ・オブ・イスラエルは先週、同国の通貨シェケルが大幅に上昇し、現在では1ドル=3シェケル未満で取引されていると報じた。この歴史的な相場は、オスロ和平プロセスの進展に対する楽観論や、冷戦後の「平和の配当」への期待が世界的な成長を後押ししていた1990年代半ば以降、達成されていなかった。
では、現在のシェケル急騰の背景には何があるのだろうか? 1つの要因は、投資家の信頼感の高まりだ。2025年6月に12日間で終結した軍事衝突から現在に至るまで、1年近く続いているイランとの対立は、イスラエルの最先端防衛技術を見せつける場となっており、世界の注目を集めている。イスラエルのハイテク産業と防衛産業は、いわゆる「新興国家」の原動力となってきた。イスラエルはここ数カ月、自国の迎撃機や無人機(ドローン)の実力を、世界中の潜在的な買い手に披露する機会を得た。これが発注や資本流入につながり、イスラエル経済を大きく後押ししているのだ。
さらに現在、新たな技術革新が進行している。これにはレーザー防衛技術も含まれており、これが実用化されれば、敵のミサイルの迎撃にかかる費用を大幅に削減できると期待されている。具体的には、1回の迎撃にかかる費用が、現在の数万~数十万ドルから、わずか数ドルにまで下がると見込まれている。将来的には、こうしたシステムが、弾道ミサイルの脅威にさらされている他の国々にも同様の恩恵をもたらすだろう。
シェケル高のもう1つの重要な要因は、イスラエル人の根底にある楽観主義だ。地政学的な包囲網が張り巡らされているにもかかわらず、イスラエルは長年にわたり「世界で最も幸せな国」の1つに数えられてきた。これは同国の不屈で粘り強い個人主義を反映している。その精神が今、実を結びつつある。イスラエルはハマスやヒズボラといった過激派勢力との2年半にわたる戦闘を乗り越え、新たな展望を見据えている。それは、イランによってもたらされる存亡の危機が完全には解消されないまでも軽減され、かつては夢物語だったレバノンとの和平が現実味を帯びてくるような、地域情勢の再編という未来像だ。
だが、いつものことながら、この経済状況にも勝者と敗者がいる。イスラエルの中小企業はシェケル高によって不利な立場に置かれている。イスラエル製造業協会のアブラハム・ノボグロツキ会長はタイムズ・オブ・イスラエルにこう語った。「対ドル為替相場が3シェケルを下回ると、輸出の採算性に致命的な打撃を与える。為替相場が累積的に約20%変動すると利益率は完全に消滅し、工場は閉鎖の瀬戸際に追い込まれる」。その上で、同会長は、緩やかで持続可能な為替相場の方が、国の経済成長を支える上で望ましいとの見方を示した。
とはいえ、シェケル高は、外国人投資家とイスラエル国民自身が同国の長期的な展望に信頼を寄せている証拠と言えるだろう。2年半にわたる紛争や大規模な政治変動、そして地域戦略の劇的な再編を経て、イスラエルは多くの人々の目に有望な投資先として映っているようだ。



