大半の人は金銭に関するストレスはお金が足りないことが原因だと考えている。昇給し、借金を返済し、貯蓄を習慣にすれば不安は消えるはずだと思う。しかし多くの場合、そうはならない。銀行口座の残高が変わっても気持ちは変わらない。
専門誌『npj Mental Health Research』に掲載された研究はその理由を理解するのに役立つ。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の前後でオランダの世帯を追跡した縦断研究で、メンタルヘルスの変化につながったのは実際の収入ではなく金銭絡みのストレスの変化だったことが明らかになった。
言い換えると、客観的な経済状況よりも「お金が足りない」という主観的な感覚がはるかに大きな心理的ダメージを及ぼしていたのだ。お金が増えたからといって自動的に金銭に関する不安が軽減するわけではない。
こうした経済的な現実と心理を区別することで真の変化が起こり始める。この記事で紹介する習慣は家計管理のテクニックではなく、心理的な習慣だ。そして多くの人にとって実際に身につくものだ。
習慣1:自分の「無意識のマネースクリプト」を明らかにする
金銭行動を変えるには、まずそうした行動の根底にある思い込みを理解する必要がある。その多くは自分で意識的に選んだものではない。
金融心理学者のブラッド・クロンツ博士らの研究チームは「マネースクリプト」という概念を提唱した。これは幼少期に形成され、大人になってからの金銭行動を静かに支配するお金に関する往々にして意識していない思い込みのことだ。
クロンツらは422人を対象に実施し、専門誌『Journal of Financial Therapy』に掲載された研究で4つの金銭観のパターンを特定した。
1. 金銭忌避:お金は悪いもの、汚れたもの、または自分にはふさわしくないものという思い込み
2. 金銭崇拝:お金さえあればどんな問題も解決できるという思い込み
3. 金銭ステータス:資産の額が自己価値を決めるという思い込み
4. 金銭警戒:貯蓄や支出に対して不安で過度に警戒する姿勢
4つのパターンのうち3つは収入や純資産の少なさと有意に関連していた。
当惑するのはこうした思い込みがあることではない。大半の人が、自分がそうしたパターンに基づいて行動していることに気づいていないという点だ。これらのスクリプトはたいてい幼少期に形成される。親が家計のことで口論するのを見たり、「そんな金はない」と言われたり、お金で恥ずかしさを感じたりお金に執着したりする家庭で育ったりして自然に染み付く。
数十年してからそうした幼少期の教訓は支出のパターンや忌避行動、状況にそぐわない金銭関連の判断に対する感情的な反応として再び表面化する。
例えば、慢性的にお金が足りない家庭で育った人は、大人になっても金銭忌避のスクリプトを持ち続けることがある。自分のためにお金を使うことに罪悪感を抱いたり、金銭的なチャンスを断ったり、あるいは無意識のうちに自分の富を台無しにする行動をとることもある。心のどこかで「自分にはそれに見合う価値がない」と思い込んでいるからだ。
自分の無意識のマネースクリプトを明らかにするには、「10歳になるまでにお金について何を学んだか」と自問するといい。考えを整理せずに書き出すこと。スクリプトを言葉にすることがその影響を弱める第一歩だ。



