モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)のベルナール・アルノー会長兼CEOは米国時間4月23日、現在進行中のイラン紛争が解決されないまま放置されれば、「世界的な大惨事」に至る可能性があると警告した。ここ数週間にわたり高級ブランドの需要減退が相次いで報告されるなか、世界屈指の富豪がこの紛争について公に言及するのは極めて異例のことだ。
23日にパリで開催されたLVMHの年次株主総会で壇上に立ったアルノーは、世界は「現在、中東において極めて深刻な危機に瀕している」と述べた。LVMHによる翻訳によれば、アルノーはイラン紛争が「極めて深刻かつネガティブな経済的影響を伴う、世界的な大惨事」へと発展する恐れがあると警鐘を鳴らした。
アルノーは、紛争が継続した場合の結末を予測することは不可能だとしながらも、事態が解決されれば企業は回復し、「通常の歩みを再開できる」だろうと指摘した。
LVMHは先週、欧州全域における観光客の支出鈍化を理由に挙げ、直近の四半期において中東での紛争がオーガニック成長率に1%のマイナス影響を及ぼしたと報告した。また、セシル・カバニスCFOは決算説明会で、2月下旬にイラン攻撃が始まって以来、需要が最大70%減少していると述べた。
ユーロネクスト・パリ証券取引所に上場するLVMHの株価は、23日朝の時点で0.2%安とわずかに下落している。
LVMHの株価は3月に約15%下落した。年初来では26%もの下落となっており、同社の時価総額は以前の2689億ドル(約43兆円)から2288億ドル(約37兆円)へと縮小した。
かつて世界一の富豪の座にあったアルノーの順位は現在第9位となっており、23日時点の推定資産額は1492億ドル(約24兆円)となっている。
グッチ、バレンシアガ、サンローランなどの主要ブランドを擁するケリングやエルメスといった他の高級ブランドも、先週発表した第1四半期決算で投資家を失望させた。両社ともイラン紛争に伴う観光需要の減退をその理由に挙げている。エルメスは、中東地域や空港の免税店向け販売が振るわず、卸売りが「著しく」減少したと報告した。
UBSのアナリスト、ズザンナ・プシュは3月、「世界的な不確実性の高まりが投資家に深刻な不安を与えている」と記しており、特に「今年期待されていた高級品需要の本格的な回復」を待ち望んでいた投資家層にその傾向が強いと指摘した。
アルノーによる今回の発言は、億万長者がこの紛争をいかに注視しているかを示す貴重な洞察といえる。3月には、億万長者でカタール元首相のシェイク・ハマド・ビン・ジャーシム・ビン・ジャブル・アール・サーニーが、カタールのエネルギー・インフラに対するイランの攻撃は、中東を「狂気じみた戦争の深淵」へと突き進ませるだけだと警告していた。



