中国にとって、調停への関与は、米国と比較して安定的で現実的な大国という印象を築くための戦略の一環でもある。中国は、米国を中東を巡る最大の競争相手として位置付けている。中国の仲介努力は外交的影響力と交渉力を強め、米国や同国が主導する地域安全保障体制を疎外したいという意図に支えられている。当然のことながら、中国は常に米国や英国が結成するいかなる安全保障連合への参加も拒否している。
中国は2023年、サウジアラビアやイランとの経済関係を活用し、7年間にわたって断交していた両国の国交正常化を支援したことで、中東での仲介者としての地位を高めた。両国とも中国のエネルギー需要と投資に依存していたため、中国政府は長期的な経済協力にとって地域の安定がいかに重要であるかを強調した。同国にとってサウジアラビアとイランとの対話は、自国のエネルギー安全保障にとって極めて重要だった。
イランに対する中国の影響力
中東情勢の混乱という状況下で、中国はイランとサウジアラビア両国との関係を維持したいと考えている。中国とサウジアラビアの関係は概して摩擦が少なく、予測可能で、経済的な相互依存関係に基づいているのに対し、中国とイランの関係は決して順風満帆とは言えない。
その一因は、両国の関係が、主に中東での米国の影響力に対抗する手段としてイランを強化したいという中国側の意向によって推進されてきたことにある。そのため、中国はイランとの経済関係を深め、同国が西側の制裁を回避できるよう支援した。両国は2021年、経済・技術面での連携を強化するため、25年間にわたる戦略的協力協定にも署名した。
中国はイランと正式な防衛協定を結んでいないものの、最近では米軍施設の正確な位置を特定するために、商業用偵察衛星を同国に提供している。中国はイランへの武器供与も準備している可能性がある。
他方で、両国は深い外交関係を築いているわけではない。中国はイランの最大の貿易相手国であり、同国産原油の80~90%が中国に輸出されているが、両国には文化的にも政治的にも共通点はほとんどない。
また、中国がイランに対してどれほどの影響力を持っているのかは定かではない。イランに限定的な譲歩を引き出すことはできるかもしれないが、大幅な譲歩までは期待できないだろう。中国は2024年1月、イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での攻撃を阻止するためイランと協議したが、現在の米国との戦闘で中国がどのような影響力を持つのかは不透明だ。例えば、イランは中国の船舶のホルムズ海峡通過を阻止し、同国に対して特別な便宜を図らなかった。
中国は、イランが中立的または友好的と見なす国の船舶に対し、航路の部分的な再開を確保する程度のことしかできないだろう。イランに対して相当な経済的影響力を持っているとはいえ、中国が同海峡の全面的な再開を強いることはまずないとみられる。イランは現在、同海峡を最も戦略的な交渉材料と見なしているからだ。さらに、中国からのいかなる圧力も、同国が過度に介入することはないだろうというイラン側の確信によって和らげられている。


