生成AIの計算需要が爆発し、データセンターは新たな成長産業の中核に躍り出た。電力・土地・税制で有利な湾岸諸国は、米テック大手の有力な投資先の1つとなっている。
しかし現在、その立地はイラン情勢の最前線となっている。2026年3月にはAWSの中東拠点がドローン攻撃を受け、サービス障害と推定1億5000万ドル(約240億円)の返金負担が生じた。4月にはイラン革命防衛隊が、米テック大手の施設を含む標的リストを公表している。データセンターは戦時の戦略インフラと見なされ、軍事施設に次ぐ標的となりつつある。さらに保険のほとんどは戦争/紛争による損害を補償しない。リスクは事業者と投資家が直接抱える構図だ。
結果として警備・対ドローン防御の市場は急拡大している。米国本土でも住民の反発に加え、ドローンへの備えが新たな論点に浮上した。対ドローン防御を含むデータセンター警備は、最大1500億ドル(約23.7兆円)の潜在市場とされ、専業企業の評価額が急上昇している。AI競争の次の戦場は、物理的な計算資源の防護そのものにも移りつつある。
データセンター防護という、AIブームの裏で拡大するもう1つの市場
AIブームによってGPUやネットワーク機器、そしてそれらを動かす巨大なデータセンターを含む、膨大な計算資源の市場が創出された。同時に、この施設群やその内部にある最重要の最先端チップを脅威から守るための、あまり注目されてこなかったもう1つの市場も拡大した。
米国内で広がるデータセンターへの反発に加え、イランへの攻撃によって、この問題は具体的なコスト項目として意識されるようになった。「データセンターは、軍事施設に次ぐ二次的な攻撃対象になっている」と、ドローン防衛企業DroneShieldの元幹部で、米国と中東のデータセンター案件に関わってきたマット・マクランは話す。
この変化が重要なのは、現在建設が進むAI向けデータセンターが、単に高価な施設というだけでなく、戦時には戦略インフラにもなり得るからだ。敵にとっては、相手の能力をそぐために軍事施設を直接攻撃する必要はない。通信や物流、決済、軍事計画まで支えている可能性がある計算基盤を狙えばよいのだ。
データセンターの防衛に携わる複数の企業幹部はフォーブスに対し、こうした現実を受けて、より強固な防護体制、とりわけ対ドローン防衛への需要が中東だけでなく他地域でも高まっていると語った。不動産サービス大手JLLによると、中東で現在稼働しているデータセンター容量は1ギガワットで、建設中の2.2ギガワットが完成すれば約3倍規模に拡大する。これとは別に12ギガワット分が計画されている。



