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2026.04.20 17:00

4兆円の物件所有、90歳のZara創業者を「世界最大の不動産王」にした節税戦略

Zaraの共同創業者であるアマンシオ・オルテガ(Photo by fotopress/Getty Images)

スペインの富裕税と配当課税を抑える、節税策として活用

オルテガが世界最大の不動産資産家になったのは、建物や倉庫への強い愛着があったからではない。不動産投資が極めて賢い節税策だったからだ。実際、この戦略によって、彼は25年間で約8億ドル(約1264億円)を節税してきたと見られる。スペインでは、数十年前に導入された富裕税に加え、2022年にミリオネア層の資産を対象に導入された連帯税があるため、使わずに眠らせている現金そのものが不利に働く。スペイン政府は毎年12月31日時点で超富裕層の銀行口座を調べ、納税額を算定する。富裕税と連帯税の最高税率は3.5%で、すでに支払った配当課税やキャピタルゲイン課税に上乗せされる。この税率は、持ち株会社の内部にあるものも含め、あらゆる資産と現金に適用される。

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ただし、ファミリービジネスには重要な例外規定がある。会社の5%以上を保有し、経営に関与しており、オルテガのPontegadeaのように実態のある持ち株会社だと認められれば、現金を銀行口座に眠らせず、事業資産として運用している限り、課税を免れることができる。

フォーブスは、オルテガが2001年以降、配当金を港湾事業や太陽光・風力発電所、通信会社、インフラ企業、多数の不動産に再投資することで、約8億ドル(約1264億円)の富裕税を節税してきたと推計している。ロンドンに拠点を置く税務・資産管理会社Blevins Franksの税務アドバイザー、ラケル・プラサは、「これがPontegadeaの不動産ポートフォリオ拡大を支えた重要な要因になった」と話している。

Pontegadeaを通じて保有することで、配当税率が1.25%まで低減

オルテガは、もう1つの税負担もうまく抑えてきた。彼はインディテックス株を個人名義で直接保有するのではなく、Pontegadeaを通じて保有することで、個人所得にかかるスペインの高額な配当課税も事実上回避できている。スペインでは、国内企業が国内子会社の株式を5%以上、1年以上保有している場合、税優遇が認められており、Pontegadeaのインディテックス株もその対象になる。

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このため、オルテガが巨額の年間配当に課される税率は、最高税率の30%ではなく、1.25%にとどまっている。しかも2021年以前はこの優遇が全面的に適用されていたため、過去20年で総額150億ドル(約2.4兆円)近くにのぼる配当についてはほぼ課税されていなかった可能性が高い。

全体として見ると、この税優遇によって、オルテガは過去25年間で配当課税を約70億ドル(約1.1兆円)軽減できたとみられる。Pontegadeaの広報担当者はフォーブスに対し、オルテガ本人とPontegadeaはほかの所得については納税しており、インディテックスの配当は、分配前の段階ですでに課税された利益から支払われているため、二重課税を避ける目的で追加の源泉徴収は行われていないと説明した。

90人で運営し、過去最高の配当を次の投資に回す

資産規模で見れば世界有数のファミリーオフィスであるにもかかわらず、Pontegadeaの従業員は世界8拠点に約90人しかいない。取締役会のメンバーも4人だ。オルテガ本人に加え、2人目の妻フローラ・ペレス・マルコーテ、現在はインディテックス会長を務める娘のマルタ・オルテガ、そして持ち株会社で長年CEOを務めてきたロベルト・シベイラで構成されている。長年の側近だったホセ・アルナウも取締役を務めていたが、2025年10月に退任した。Pontegadeaの広報担当者は、オルテガ、シベイラ、アルナウの3人をフォーブスの取材に応じさせることを拒んだ。

シベイラは2020年、英フィナンシャル・タイムズの取材に異例の形で応じた際、Pontegadeaは「巨額のリターンを追い求めているわけではない」としたうえで、「自分たちを守り、安定したキャッシュフローを生み、資本価値を維持する投資」を重視していると語った。当時、彼は同社の保有物件の95%が、大都市の高級商業地区のような「一等地」にあると説明していた。同じインタビューでアルナウは、「我々には再投資しなければならない巨額の配当収入がある。その結果、想像もしなかった規模にまで膨らんだ」と語っていた。

2026年には約6004億円、過去最高となる配当を受け取る見通し

その配当収入は、現在も膨らみ続けている。オルテガは2026年5月と11月の2回に分けて、インディテックスから過去最高となる38億ドル(約6004億円)の配当を受け取る見通しだ。そして彼は、次の投資先の選定にもすでに動いている。2月には、豪資産運用大手マッコーリーが、豪年金基金およびPontegadeaと組み、上場企業の輸出入物流会社Qube Holdingsを80億ドル(約1.3兆円)で買収することで合意したと発表した。

この案件でオルテガがいくら負担するのかは明らかになっていない。ただ、スペイン政府の年末の課税基準日が来る前に、彼は新たに手にする巨額の現金の使い道を見つけることになりそうだ。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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