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2026.04.21 17:00

億万長者の行列ができるクレジットカードとは? 顧客を全員失ったフィンテックが「超富裕層専用」で復活

Atlas CEOのパトリック・ムロゾウスキー(Photo by Taylor Hill/Getty Images)

手厚い顧客対応とコンシェルジュ機能を軸に、ポイント競争ではない勝ち筋を探る

PointをAtlasとして立て直す中で、ムロゾウスキーは手厚い顧客対応の重要性を学んだ。彼は新規ユーザーとの導入時の通話を自ら1000件以上こなし、顧客の好みを把握しながら、Atlasの使い方や仕組みを説明してきた。Atlasは、OpenAIとグーグルのAIモデルを使って、ユーザーからの依頼内容の要約、返信文の下書き、顧客プロフィールの作成、個別に最適化した提案を行っている。フルタイムの従業員は40人で、欧州と米国を拠点とする20人の業務委託のコンシェルジュチームが顧客対応を担っている。

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ムロゾウスキーは、カード会員のために人気の店の席を確保する際、Atlasの利用者は高額消費をする顧客だとレストラン側に伝えている。場合によっては、席を確保するためにAtlasがレストラン側に費用を支払うこともある。旅行代理店に近い収益モデルを持つ同社は、顧客の予約を手配する見返りとして、ホテルや航空会社から手数料を受け取っている。Atlasはまた、追加で500ドル(約7万9000円)を支払えば、あらかじめ利用限度額を設定した追加のカードを複数枚発行し、家族やハウスマネジャー、ベビーシッターに持たせるサービスも提供している。

Atlasによれば、入会から1年後の継続率は80%、2年後でも70%に達している。ルーシー・グオは、自身が持つ別のカードである超富裕層向けの「JPMorgan Reserve」に比べて、Atlasはポイントや特典が少ないため、当初は懐疑的だったと話す。JPMorgan Reserveは、取得条件としてJPモルガンのプライベートバンクに少なくとも1000万ドル(約15億8000万円)の資産を預けていることが必要だと報じられている。だがグオは、その後Atlasのコンシェルジュサービスを使ううちに、「このカードには高額な年会費を払うだけの価値がある」と考えるようになった。Atlasは、一定額以上の資産保有を条件にしない代わりに、高額な年会費を設定している。

もっとも、顧客基盤はまだ小さく、Atlasが採算ラインに乗るまでの道のりは遠い。持続可能な事業モデルを築く段階にも、まだ達していない。アメリカン・エキスプレスのプラチナカードやCenturionカードの会員数は数百万人規模にのぼり、豪華な空港ラウンジや、LululemonやSaksなどの小売店で使えるクレジットといった特典も充実している。そうした内容に比べると、Atlasが現在提供している特典は見劣りする。

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しかし、ムロゾウスキーは、アメックスやJPモルガンのような手厚いポイント還元や特典で勝負しようとはしていない。彼が力を入れているのは、あくまでAtlasのコンシェルジュサービスだ。

年間約7900万円以上を使う1万人を集められれば、年間の粗収益は約158億円

ムロゾウスキーが再出発させたAtlasが、長期的に生き残れるかどうかはまだ見通せない。彼によれば、狙っているのはアメックスのCenturionやJPMorgan Reserveの会員で、カードで年間50万ドル(約7900万円)以上を使う顧客だ。とはいえ、仮にAtlasがこうした利用水準に達する顧客を1万人集められれば、2%の加盟店手数料だけで年間の総売上高(粗収益)は1億ドル(約158億円)に達する計算になる。Atlasの成否は、これから明らかになる。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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