建設業界でキャリアを開始したアルノー氏は、1984年に破産状態にあった仏高級ブランド「クリスチャン・ディオール」を9500万ドル(約151億円)で買収し、高級ファッション業界へと転身。その後、経営陣の対立が続いていたLVMHで戦略的に株式保有比率を高めていった。1989年までにLVMHの支配権を確固たるものにし、ディオールを同社に統合。現在ではファッション、ジュエリー、化粧品、酒類にまたがる75のブランドを擁する高級品帝国を築き上げた。アルノー会長は1997年、推定純資産36億ドル(約5700億円)で初めてフォーブスの世界長者番付に名を連ねた。
現在の高級品市場の低迷は、主にパンデミック後の異常な好況の余波によるものだ。好況期には、ブランド各社が成長を維持するために価格引き上げに過度に依存していた。米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーの報告書によると、2023~25年にかけて、高級品市場の成長の約80%は販売量の増加ではなく、価格引き上げによるものだったと推定されている。
だが、ここへ来て、中東情勢による新たな逆風に加え、為替相場の変動や生活費の高騰による消費者の購買意欲の低下などにより、業界の見通しは不透明になっている。とはいえ、消費者の全体的な景況感が低下する中、12%の成長を記録したLVMH傘下の伊ロロ・ピアーナのように、高級ブランドの伸びは超富裕層の購買力の強さを示している。
2023年4月、パンデミック後の高級品需要がピークに達し、LVMHが予想の2倍となる四半期売上高の伸びを報告した際、同社は株価が900ユーロ(約16万8600円)を突破し、時価総額が5000億ドル(約79兆4100億円)に達した初の欧州企業となった。これに伴い、アルノー会長の資産も2000億ドル(約31兆7700億円)を突破した。LVMHの株価は最高値から46%下落しており、現在の時価総額は2380億ユーロ(約44兆5900億円)となっている。


