ホルムズ海峡の封鎖は「経済テロ」
ADNOCの最高経営責任者(CEO)を兼任するUAEのスルタン・ビン・アフマド・スルタン・ジャベル産業・先端技術相は、ホルムズ海峡の封鎖を「経済テロ」と呼び、イランが「同海峡を人質に取れば、すべての国がガソリンスタンドや食料品店、薬局でその身代金を支払うことになる」と非難した。
石油と肥料の両面で最も深刻な打撃を受けているのはアジアだ。シンガポールのビビアン・バラクリシュナン外相は「ホルムズ海峡の封鎖は、ある意味ではアジアの危機だ」と指摘。「この脆弱(ぜいじゃく)性は認識されていたが、今日のような極端な状況下で検証されたことはなかった」と述べた。
金属市場も逼迫
アルミニウムも懸念材料の1つだ。仏金融大手ナティクシスによると、湾岸諸国は世界の一次生産量の約10%、輸出量の約20%を占めている。混乱の兆しは既に現れ始めており、一部の製錬所は生産を縮小し、国際指標となるロンドン金属取引所(LME)の価格は数年来の高値に向けて上昇している。
業界誌「SNIPS」は、アルミニウム価格が現在、歴史的な水準で高騰していると伝えた。同誌の編集者オースティン・キーティングは、「これは単なる画面上の数字ではなく、国際市場にとって重要な供給動脈を表している。昨年、ホルムズ海峡を経由して輸送されたアルミニウムは、アジア、欧州、北米の70カ国へと向けられた」と指摘した。
石油化学製品も苦境に
石油化学製品も厳しい状況に置かれている。ロイター通信によると、ホルムズ海峡を通過する石油化学製品の年間取引額は200億~250億ドル(約3兆~4兆円)に上り、同海峡での混乱により、プラスチックやポリマーの価格は既に数年来の高値水準に押し上げられている。サウジアラビアをはじめとする中東諸国は昨年、世界全体のポリエチレン輸出の4割以上を占めた。ポリエチレンとポリプロピレンは、食品包装や医療機器から自動車部品や家庭用品に至るまで、あらゆるものの中に使われているため、これは重要な問題だ。混乱が長引くほど、これはエネルギー分野をはるかに超えたインフレ問題に発展する。
ヘリウム不足の懸念が広がるハイテク業界
ヘリウムも問題を抱えている。これは通常は特殊な原料だが、供給が逼迫(ひっぱく)すると、決して特殊とは言えなくなる。半導体の製造は長期的には打撃を受ける可能性があるが、アナリストらは、各社の在庫や代替供給業者が短期的な影響を和らげる可能性があるとみている。カタールは世界のヘリウム生産量の約3分の1を占めている。供給不足が長引けば、人工知能(AI)や半導体から医療、先端技術に至るまで、幅広い産業に波及する恐れがある。
世界最大級の半導体分野の国際展示会「セミコン・チャイナ」で講演した業界の幹部らは、ヘリウムの供給不足による影響は既に及んでおり、各社は代替調達先の確保に迫られていると述べた。ヘリウムは、医療用画像診断装置をはじめとする精密機器からAIハードウエアに至るまで、幅広い産業で不可欠な存在となっている。


