無人機メーカー
もう1つの勝者は、各種無人機(ドローン)を製造している企業や、これらを無力化するシステムを開発している企業だ。世界的に防衛費は急増しており、今年は約2兆8000億ドル(約446兆円)に達する見通しだ。ウクライナ侵攻やイラン紛争で無人機が圧倒的な有効性を発揮していることを踏まえると、関連企業には間違いなく相当な資金が流れ込んでいるとみられる。
現時点では、世界の軍用無人機市場は昨年、160億ドル(約2兆5000億円)規模に達したとみられており、2020年代末までに230億ドル(約3兆7000億円)規模にまで拡大すると推定されている。精密攻撃や情報収集から後方支援や地雷探知に至るまで、無人機が戦場で担う任務の範囲の広さが成長を後押ししており、イラン紛争は国家や非国家主体による無人機への関心を世界的に高めるだろう。
イラン紛争の3つの敗者
中東諸国
いかなる基準で見ても、この1カ月はペルシャ湾岸諸国と周辺地域にとって厳しいものだった。湾岸諸国が政治・経済の安全な拠点として築いてきた国際的な評判が損なわれたことに加え、イランのミサイルや無人機によって空港やホテル、港湾といった重要な民間施設が破壊された。修復には恐らく数年を要するだろう。同様に、イランが被った被害は、最終的に誰が権力を握ろうとも、回復には10年程度かかるものとみられる。
一方、戦闘の激化で、湾岸地域を越えて中東の他の地域にも被害が及んでいる。この紛争は、レバノン、ヨルダン、エジプトを含む中東の多くの国々を深刻な経済危機に陥れるとの見方もある。国連は、同紛争による打撃で中東では最大400万人の雇用が失われ、アラブ諸国では数百万人が貧困に陥り、同地域の国内総生産(GDP)は最大で6%、2000億ドル(約32兆円)近く減少すると予測している。同様に懸念されるのは、紛争によって湾岸諸国が被った深刻な被害(国連は現在、湾岸諸国だけで1500億ドル(約24兆円)以上のGDP損失を予測している)が、戦後の復興計画への財政支出能力を著しく制限するという点だ。
NATOと米国の関係
残念なことに、77年にわたる北大西洋条約機構(NATO)と米国の協力関係も、この紛争の犠牲となる可能性が高い。今後数カ月のうちに、米国のドナルド・トランプ大統領がNATOに対する関与を見直す可能性も十分にある。
同大統領のNATOに対する不満は長年にわたり高まっており、同機構の加盟国が自国の防衛に十分な資金を投入していないことに加え、最近ではNATOが米国のイランへの軍事作戦に参加しなかったことや、封鎖状態に陥っているホルムズ海峡の再開を支援することに消極的であることなど、不満の種は多岐にわたる。トランプ大統領の主張の是非はともかく(はっきり言っておくが、筆者は、NATOは米国の安全保障の要であり、米国がNATOとの関係を断つことは戦略的な誤りだと考えている)、イラン紛争をきっかけに、同大統領のNATOに対する不満が限界点に達したことは明らかだ。筆者は、トランプ政権が間もなくNATOからの脱退に向けた地ならしを始めるだろうと確信している。


