AIワークスロップが下流に及ぼす影響
ワークスロップの厄介な点の1つは、その影響が必ずしもすぐには見えないことだ。ざっと目を通しただけでは、必要な要素はすべて揃っているように見える。だが実際には、それは企業版の「張りぼて」のようなものだ。遠くから眺めれば立派だが、近づいてみると中身は空っぽなのである。
それでも、その拡大は止まっていない。ハーバード・ビジネス・レビューによれば、米国のさまざまな業界で働く従業員の40%が、この1カ月だけでもワークスロップの受け手になっている。多くは同僚同士でやり取りされるが、部下から上司へ、また上司からチームへと送られることもある。その結果、受け取った側は、渡されたものを解きほぐしたり、やり直したりするために、自分の時間を使わなければならなくなる。いわばスロップが滝のように下へ流れる現象で、最も下にいる人ほど、目の前に積み上がった混乱をふるい分ける役目を負わされる。
AIワークスロップは、職務記述書や人事評価に表れない「見えない労働」を生む
もちろん、こうしたことはチーム内の信頼や協力しようという気持ちを育てる上で、まったくプラスにならない。履歴書作成プラットフォームのZety(ゼティ)でキャリア専門家を務めるジャスミン・エスカレラは、こう語る。「ワークスロップは、職務記述書や人事評価にはほとんど表れない『見えない労働』を生みます。従業員は仕事を前に進めるためだけに、本来の責任範囲の外で黙ってミスを直していることが多いのです。そうした余計な、しかも見過ごされがちな仕事は、時間がたつにつれて、疲れやいら立ち、仕事への無関心へとつながっていきます」。
チームの働き方や従業員同士の認識を損なう
今は、信頼に余計な負荷をかけてよい時期ではない。エデルマンの年次調査「トラスト・バロメーター」によれば、諸制度への信頼はすでに危険なほど低い。「ワークスロップ」という言葉の共同提唱者の1人であるスタンフォード大学のジェフ・ハンコック教授は、HR Brew(エイチアールブリュー)に対し、職場は信頼が比較的安定して残っている数少ない場の1つだと語った。彼によれば、ワークスロップはチームの働き方を損なうだけでなく、「互いをどう見るかという認識まで損ねています。ですから、組織にとって極めて重要な信頼には、さらに大きな隠れたコストが生じている可能性があります」という。


