2. 個人に即したカスタマイズのさらなる深化
AIが非常に焦点を絞ったマーケティングに使われる時代にあっても、特別な体験を提供することにフォーカスしたビジネスモデルの多くは「人間味」を売りにしている。これが、クライアント個々人の具体的なニーズや興味関心に応える、ハイエンドで値打ちのある体験を創出するための切り札として使われているのだ。
富裕層向けの会員制旅行プログラムThe Reserve Collection(ザ・リザーブ・コレクション)の創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるチャド・ニューボールドはMSNのインタビューで、会員制サービスのメリットについてこう解説している。
「会員制プログラム内で提供される、個々のニーズに即した旅行サービスを利用すれば、会員は、単に目的地に着くことを越えた体験を楽しむことができる。例えば、トップクラスのシェフによるプライベート・ディナー、文化遺産でのメンバー限定のバックヤード・ガイドツアー、スポーツおよび文化イベントで、会場内で最高の席の確保といったことが可能になる。会員制サービスの旅行では、胸が躍るような幅広いアクティビティにアクセスできる。これらは、独力で実行しようとしても非常に時間がかかるし、手配が難しいものばかりだ」
このレベルの体験を提供するにあたっては、旅行者やアクティビティ参加者の好みを把握するため、まずはプロのコンシェルジュがヒアリングを行なう。このように対面で顧客の好みを聞くことで、コンシェルジュ・チームは、利便性と高級感を同時にかなえ、さらには、多少のサプライズの要素も入った、その人に即した旅行プランを作成することができる。
さらにAIとデータを駆使すれば、このようなコンシェルジュ・サービスは、カスタマイズ度をさらに高めることができる。膨大なデータリソースを活用することで、旅程やアップグレードを、顧客一人一人に即した形でさらに深化できるからだ。旅行参加者の要望やニーズを、伝えられる前に先回りして予測し、一貫性のあるラグジュアリー体験を演出することさえ可能になるだろう。
3. 「究極にスムーズな体験」創出のためのテクノロジー活用
限られた人にしか提供されていない特別な体験を得るには、煩雑なプロセスに耐える必要が生じることが多い。例えば、アカデミー賞の出席者は伝統的に、レッドカーペットにたどり着くまでに、3つの警備エリアでチェックを受けなければならない。あるいは、空港での手荷物検査やチェックインの長い行列を思い浮かべてみてもわかるだろう。これは、ストレスが増し、旅行を台無しにしかねない体験だ。
この先テクノロジーが進展したとしても、アカデミー賞のようなハイレベルのイベントで、物理的な安全確保の必要性が一掃されることはないだろう。それでも、体験を改善し、より能率的でスムーズなものにするために、テクノロジーを活用する方法は数多くある。
例えば、ジオフェンシングを使えば、目に見えない仮想的なセキュリティレイヤーを設定し、見た目の物々しさを抑えることができる。バイオメトリクスや暗号化されたプロフィルがあれば、空港係員の目視によるX線検査やチェックインが必要なくなるかもしれない。さらにこうした技術は、ゲストがイベント会場に到着した際に、その人の好みを予測し、応えるのにも役立つ可能性がある。
具体例を挙げると、一人一人のゲストの好みをトラッキングするツールがあれば、本人が注文する前に、人間のスタッフが、その人のお気に入りのドリンクを届ける、といったことも可能になるはずだ。
テクノロジーの力で、バックヤードでのモノの流れを調整できるようになれば、人間のスタッフは、体験の中でも「おもてなし」の部分により注力し、よりゲストの記憶に残る体験を提供できるようになるだろう。


