北米

2026.04.07 11:00

米国の製油所は「シェールオイルを処理できない」という話は本当か?

Justin Sullivan/Getty Images

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エネルギー業界で広く浸透している作り話のひとつに、米国の製油所はシェールブームが生んだ軽質・低硫黄原油を「処理することができない」というものがある。この主張は、米国のガソリン価格が上昇したり、エネルギー自給率が議論の的になったりするたびに表面化する。その論拠は大抵、「米国は過去最高の石油産出量を記録しているのに、依然として輸入を続けている。それは製油所が海外産の重質原油に合わせて建設されたものだからだ」というものだ。

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これは説得力のある物語に聞こえるが、その大部分は間違いである。

米国の製油所は、毎日シェールオイルを処理することが可能であり、実際に行っている。問題は技術的な能力ではなく、経済的な合理性にある。

この違いを理解することは極めて重要だ。なぜなら、それこそが米国が大量の原油を輸出しながら同時に輸入も続けている理由であり、そのシステムが見かけよりもはるかに効率的に機能している理由を説明してくれるからである。

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重質原油への大きな賭け

この誤解の根源は数十年前に遡る。1980年代から2000年代初頭にかけて、製油業者は有名なあるトレンドに基づいて、巨額の設備投資を行った。それは、高品質で精製しやすい原油が希少になりつつあるという予測だった。将来は、より複雑な炭化水素分子を含む「重質」で、かつ硫黄分が多い「高硫黄」な原油ばかりになるとの予想である。

製油業者はこれに対応するため、コーカー、ハイドロクラッカー、脱硫装置など、製品化が困難な重質・高硫黄原油を処理するための装置に数百億ドルを投じた。

これらの投資により、米国湾岸の製油所は世界で最も洗練された施設へと変貌を遂げた。カナダ、メキシコ、ベネズエラなどから大幅に割り引かれた価格で重質原油を購入し、ガソリンやディーゼル燃料などの高付加価値な製品に転換できるようになったのである。これが、業界で「複雑性プレミアム」と呼ばれる持続的な競争優位性を生み出した。

シェール革命

その後、シェール革命がシナリオを書き換えた。

軽質原油が不足するどころか、米国は突然、軽質油であふれかえることになったのだ。テキサス州にあるパーミアン盆地などの地域から産出されるシェールオイルは軽質・低硫黄の原油であり、硫黄分が少なく、精製も比較的容易だ。

これは米国にとって理想的な話に聞こえるが、高度に複雑化した製油所とはミスマッチが生じることになった。

これらの施設は、重質原油から最大の価値を引き出すように設計されており、軽質原油を使いすぎると、その優位性が失われ始めてしまうのである。

シェールの精製で効率が低下

重質原油に最適化された製油所に軽質なシェールオイルを高比率で投入すると、2つの大きな問題が発生する。

まず、コーカーやハイドロクラッカーといった高価な装置の稼働率が低下する。これらは重質な原油がもつ重い分子を分解するために設計された数十億ドル規模の資産だ。軽質原油は重質のものよりも高価である上に、これらの装置を高効率・高稼働率の状態に保つために必要な重い分子を供給できない。

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翻訳=江津拓哉

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