4月上旬に目を見張るような壮大な天体ショーを披露してくれるのではないかと期待されていた彗星「C/2026 A1(MAPS)」(マップス彗星)は、太陽に最接近した瞬間、その紅炎に包まれるようにして消滅してしまった。
一部の天文学者はマップス彗星がきわめて明るく輝く「大彗星」になる可能性を指摘していた。しかし、彗星は4月4日に太陽に最も近づく「近日点」を通過した際に完全に蒸発して終焉を迎えた。天体観測家の注目はすでに、4月下旬に観測チャンスを迎えるとみられる彗星「C/2025 R3(PanSTARRS)」(パンスターズ彗星)へと移っている。
「いちかばちか」の彗星、期待は報われず
3月下旬の段階で、マップス彗星は典型的な高リスクの「サングレーザー彗星」として天文学者たちの注目を集めていた。サングレーザーとは太陽をかすめる公転軌道を持つ彗星の分類で、マップス彗星はその中でも大彗星をいくつも生んでいる「クロイツ群」と呼ばれる彗星の一群に属している。クロイツ群の彗星は、驚異的な輝きを放つ可能性がある一方で、非常に崩壊しやすいことでも知られている。
初期の予測では、マップス彗星は近日点を通過後、4月中旬の夕空にまばゆく輝く雄大な尾を伴って出現するのではないかとみられていた。だが、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測の結果、彗星の核が当初考えられていたよりもはるかに小さく、しかも太陽への接近距離が予想よりもずっと近いことが判明した。
マップス彗星は4日、太陽表面からわずか16万2000kmの至近を通過した際、太陽観測衛星「SOHO」のカメラ視点で太陽の向こう側へと隠れたきり、二度と姿を現すことはなかった。

彗星の最後の瞬間
太陽の周辺を監視するSOHOの広角分光コロナグラフ(LASCO/C2)が、マップス彗星の崩壊する瞬間を捉えていた。
彗星の核は、太陽の光球を隠す円盤の影へと入って視界から消えたところで崩壊したとみられ、その後、円盤の反対側から塵が噴出するように拡散していく様子が映っている。

マップス彗星をめぐっては、肉眼で見えるようになると期待され、夕空だけでなく昼間でも観測可能な非常に明るい彗星になる可能性も取りざたされていたが、その望みは打ち砕かれた。彗星の予測の難しさを浮き彫りにする結果だともいえる。
サングレーザー彗星は、近日点を生き延びて劇的に明るくなる事例がある一方で、多くは肉眼で見えるようになる前に崩壊してしまう。



