キャリアのどこかで、会議や面接、あるいは気の重い対話の最中に、こんな瞬間を経験したことがあるはずだ。
言いたいことはわかっている……しかし、相手にうまく伝わるように、どう言えばいいのかがはっきりしない。
その結果、言葉をやわらげたり、必要以上に説明したり、いっそ黙ってしまったりする。
心当たりはないだろうか。
多くの人は、職場での会話における微妙なニュアンスやベストプラクティスを学ばないまま仕事の世界に入る。自然に身につける人もいれば、最後まで身につかない人もいる。後者にとっては、周囲の誰もが共有しているのに自分だけが知らない「秘密の言語」があるように感じられることもある。
エリン・マクゴフは新刊『The Secret Language of Work』でこの点を掘り下げ、給与交渉から難しい会話の切り抜け方、境界線の設定、自分のための働きかけまで、職場で頻出する状況でより効果的に伝えるための実践的な「そのまま使える言い回し」を提示している。
「『秘密の言語』とは、非常に影響力のあるコミュニケーターが見事に歩いている、微妙で紙一重の線のことです」と彼女は言う。「うぬぼれずに自信を示し、尊大にならずに主張し、無礼にならずに率直でいられる。その領域です」
つまり、仕事での成功は才能だけで決まるわけではない。鍵は「流暢さ」にある。
努力だけでは、いつも十分とは限らない理由
すべてを正しくこなしていても、見過ごされることはある。
マクゴフによれば、努力がそのまま成功に直結するわけではない。しかし「見える努力」は成功につながる。
「誰よりも早く出社して最後に帰ることだってできます。でも、自分の目標を明確にしなければ、誰かがそれを達成する手助けをしてくれると期待することはできません……仕事ができること(賢く働く)に加えて、それをきちんと周囲に示す必要があります」
有能さは自然に機会につながる、という思い込みは根強い。だが現実には、明確に伝えられていないことに対して、人は反応も支援もできない。
マクゴフは、この教訓を早い段階で学んだという。
「19歳のとき、窓のない部屋に1人で閉じ込められ、1学期ずっとハードドライブのファイル整理をしていました。無給で、映画制作については何も学べないまま」と彼女は言う。「つらかったのに、どう言えばいいかわからず、何も言えませんでした」
経験豊富なプロが難しい会話をどう扱うかを見たことで、彼女の見方は変わった。
「交渉中に笑いながら進めるビジネスウーマン、厄介なクライアントがいるプロジェクトを滑らかに回すプロデューサー、率直なのに不快ではないフィードバックをする同僚。彼女たちはチェスをしていて、私はチェッカーをしていました」
信頼性を損なう小さなフレーズ
ときに信頼性を傷つけるのは大きな失敗ではなく、自分でも気づかないまま口にしている小さなフレーズだ。
丁寧に聞こえるはずの言い回しが、静かにメッセージの力を弱めてしまうことがある。
「『わかりますか?』や『わかりにくかったらすみません!』ですね。ほとんどあらゆる発言の締めに付ける人がいますが、自信を削る言葉です」とマクゴフは言う。
「賢く、明確に言い切った直後に、自分に不利な賭けをしているのです」
彼女の助言はシンプルだ。
「本でも言っていますが、『やめる前にやめる!』。話すのをそこで止めて、相手に考えてもらえばいいのです」
小さな調整だが、場でどう見られるかを完全に変えうる。
率直さは、きつさではない
職場で言い控える人が多い理由は1つに集約できる。面倒な人だと思われたくないのだ。
しかし、明確さと攻撃性は同じではない。
「きつさは個人的で、明確さはプロフェッショナルです」とマクゴフは言う。
明確なコミュニケーションは、人ではなく行動や論点に焦点を当てる。そのためフィードバックは受け取りやすく、行動にも移しやすくなる。
交渉がこれほど居心地悪く感じられる理由
もう少し欲しい、と切り出した途端に、部屋の空気が変わる。
能力の高い人でさえ、交渉をためらうのは、その会話が感情的にリスクの高いものに感じられるからだ。
「怖いのです」とマクゴフは言う。「拒絶されること、失礼に見えること、相手を不快にさせること、提示を取り下げられることが怖い」
彼女は、会話の軸を「価値」に置き換えることを勧める。
「自分のことにしないでください(相手は興味がありません)。相手のことにするのです」と彼女は言う。「最初は必ずポジティブに……それから根拠を示す」
この発想の転換は強力だ。交渉を対立ではなく、すり合わせへと変えるからである。
コミュニケーションの価値が、さらに高まっている理由
さっとメールを送って、深く考えないタイプだろうか。いまこそ、見直すタイミングかもしれない。
「家で1人で働き、1日中スクリーン越しにやり取りしていると、思っている以上に多くのことを教えてくれる"微細なやり取り"を失ってしまいます」とマクゴフは言う。
つまり、いまや文章によるコミュニケーションが、仕事上の可視性に大きな役割を果たしている。
「メールの見え方が、そのままあなたです。だからこそ、卓越したものにしてください」
さらにAIが職場を変え続けるなかで、マクゴフは人間同士のコミュニケーションの価値は一段と高まると考えている。
「いま最も重要なスキルはAIだと誰もが思っています。でも私の意見では、実際に重要なのは対人スキルです」
すべてを変える、たった1つの問い
コミュニケーションの仕方を1つだけ変えるなら、これにしてほしい。
返答する前に一呼吸置き、自分が本当に望む結果は何かを問うことだ。
「望む結果を忘れないでください」とマクゴフは言う。「メールでも、会議でも、難しい会話でも、始める前に自分に問いかけてください。『ここで私は本当は何が欲しいのか?』と」



