経済

2026.04.03 11:00

世界一の産油国である米国で、なぜガソリン価格が急騰しているのか?

Kate/Adobe Stock

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ガソリン価格が上昇の一途をたどっている。米国とイランの武力衝突が発生すると、ガソリン価格は一夜にして1ガロン(約3.8リットル)当たり約50セント値上がりした。米自動車協会(AAA)によると、米国では過去1カ月間でガソリンの全国平均価格が1ガロン当たり1ドル近く上昇しており、ここ数十年で最も急激な値上がりとなっている。

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多くの米国人は不当に高く請求されているように感じており、次のような疑問を抱いている。米国は世界最大の産油国であり、実際にエネルギー自給を実現しているのに、なぜ国民は世界情勢に翻弄(ほんろう)され続けているのだろうか? 数週間前にはもっと安かった原油から作られたガソリンなのに、なぜ価格が急騰するのだろうか?

人々は「企業が利益をむさぼっているから」といった、単純でわかりやすい答えを好む。そう考えれば精神的には満足できるかもしれないが、それだけでは全体像を伝えきれていない。現在起きていることは、世界の市況や供給網の実態、消費者の行動に見られる予測可能な傾向といった要因が複合的に作用した結果だ。

原油価格を決定しているのは米国でも石油企業でもない

米国は世界一の産油国だが、原油価格は国内で決まるわけではなく、石油企業によって設定されるわけでもない。米国は国際市場に石油を輸出しており、原油価格は石油を競り合うトレーダーによって決定される。これが、多くの人が気づいていない点だ。

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石油市場を、相互に連結された単一のシステムとして考えてみよう。どこかで供給が脅かされれば、価格はあらゆる場所で反応する。そして、世界の石油の2割近くが通過するホルムズ海峡ほど重要な場所はない。その石油輸送の要衝が危機にさらされると、トレーダーは直ちにそのリスクを価格に織り込む。

こうしたことから、米国の国内情勢に何も変化がなくても、米テキサス産の原油が突然値上がりするのだ。米国の生産者は国際市場に販売しているため、同国の精製業者は国際価格に合わせなければ供給を失うことになる。最大の生産国であることは米国民を守るものではなく、単に米国民が国際システムに深く組み込まれていることを意味するに過ぎない。

ガソリン価格が反映しているのは明日のコスト

消費者の2つ目の不満点、つまり「安い」ガソリンが売り切れる前に価格が急騰する理由は、再調達原価の問題だ。ガソリンスタンドは、既にタンクに入っているガソリンの価格ではなく、それを補充するのにかかる費用を価格に反映している。小売燃料事業は利益率が低く、ガソリンスタンドの経営者は前回の納入ではなく、次回の納入について考えなければならない。卸売価格が急騰している中で昨日の価格水準で売り続けると、ガソリンを補充するための資金が不足する恐れがある。

つまり、価格はすばやく変動するのだ。消費者の側からは不公平に思えるかもしれないが、小売業者の立場からすれば、変動の激しい市場で経営を維持していくための手段なのだ。

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翻訳・編集=安藤清香

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