食&酒

2026.04.11 14:15

実力派シェフが行き着いた、8席カウンターフレンチという選択

フレンチレストラン「Cheval」のシェフ 小泉敦子氏

「仕入れから下処理、下準備まで、お客様がいらっしゃるまでは、それこそフルスロットル、爆速で動いています。お客様がいらしてからはあまりバタバタしたくないので、余裕があるように見せていますけれど。いわば白鳥が水の中で必死にもがいているようなもんです」

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そう笑い、翌日から始めるというメニューを盛り付けながらこう続けた。「よく料理人は旬を追いかけると言いますが、私の場合は完全に旬に追いかけられています。もう路地もののホワイトアスパラガスがでてきた、新しいメニュー考えなきゃというように」。

しかしながら、経験値の高さによる確かな実力からくるものなのだろうが、接客時にはエレガントなゆとりさえ感じるほどだ。

「お客様とのやり取りもやっと楽しめるようになってきました。今48歳ですが、30代では客前でこれだけ自信をもって、はいどうぞ評価してくださいとはできなかったと思います。経験を積んだ今だからこそちょうどいいのでしょう。小伝馬町の駅から7分という静かな立地も気に入っています。江東区の出身だからか、東側が落ち着くんです」

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やりたいと思ったことをやりたいようにやれる気持ちの良さは、多くの女性料理人の共感を得るに違いない。他方、その“女性”であることに関して小泉氏は「ミクニ マルノウチの時代も料理班は私一人でしたが、私自身は性差を意識したことはなかった」という。

「ただ、例えばフランスでは、重くて持てない鍋を持ち上げるにもすっと手を貸してくれる人がいる。私の言う言葉は『ありがとう』だけ。ところが日本では、まずすみませんから始まる。『すみません、重くて持てないんですが手伝ってもらえますか』と。そのストレスはないわけではないですよね」

また、フランスは女性のライフステージの変化に関しても寛大で、あたりまえのこととして認めてくれていたという。妊娠、出産による休暇なども、周りはごく当然のこととして仕事を分担して、その穴を埋めようとする。不平不満の声はどこからも上がってこない。「これは文化の成熟度の違いだなと強く思った」と振り返る。

日本ではどうしてもそうはいかず、変えていくのにはまだ時間がかかるかもしれないが、どうにか少しずつでも一人一人のマインドを変えていくことが、女性料理人の育成・成長につながるだろう。

開業1年を前に今後の目標を聞くと、地元に根付いた地元の人に愛される店になることだという。女性一人でもできるレストランのロールモデルとして、輝き続けてほしい。

文=小松宏子 写真=升谷玲子 編集=鈴木奈央

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