食&酒

2026.04.11 14:15

実力派シェフが行き着いた、8席カウンターフレンチという選択

フレンチレストラン「Cheval」のシェフ 小泉敦子氏

3年後、マルクス氏がパリにニューオープンするマンダリンオリエンタルホテルの総料理長として迎えられると、小泉氏はスーシェフとして同行することになった。そこでは、もう一人の日本人女性シェフと二人でキッチンを回していくスタイル。責任も重いが、やりがいもあった。

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5年ほど続けたのち、銀座への出店話が浮上する。「そのときには、フランスという国に少々疲れていたんですね。どこでもいい、別の国に行きたかった」と小泉氏。日本へ戻る際には、“凱旋帰国”と言われることも多かったというが、本人はそんなつもりはなく、ただただ、新しい環境で総料理長として力を試せることに魅力を感じていた。

「実際には経営側との折衝から雑用まで仕事は山積みで、思ったよりずっと大変でしたが。でも、ハイブランドとのコラボレーションディナーなど、個人の力では到底できないことをたくさん経験させてもらって、料理人としては一回りも二回りも大きくなれたと思います」

しかしコロナのあおりを喰い、店を閉めるに至った。希望するスタッフの最後のひとりまで次の就職先を決め、送り出した時には、ある種の燃えつき症候群のようになっていたという。それもあって、その後は知り合いの沖縄の店の立ち上げを手伝うなど、これまでとは方向性を変えた仕事をした。

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そんな折、たまたま那覇のすぐ近くの店でカウンターフレンチのシェフをやらないかという話が持ち込まれる。キャリアを振り返った時に、様々な規模、業態の店に携わってきたが、カウンターはなかったなと、飛び込んでみることにした。実際に始めてみると、何でも自分で決められるスタイルが性に合い、存外に気持ちがよかった。

そうこうするうちに郷土である東京に腰を落ち着けようという気になっていく。店の形態も、何もかもを一人でこなすワンオペ、カウンタースタイルの店に自然と落ち着いた。名前は大好きな馬=Chevalと決めた。

マルクス氏のもとでずっとコース料理でやってきたが、敢えてアラカルトスタイルに挑戦した。料理も決して重すぎることのないクラシカルに回帰。「本当に今、自分が食べたいものをお客様とシェアしたい」そんな気持ちの表れだ。品書きにはアリゴ、クネル、牛ホホ肉の赤ワイン煮といった、ザ・フレンチが並ぶ。メニュー数は決して多くはないが、少数精鋭、フランス料理好きなら垂涎ものの逸材ばかりだ。

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文=小松宏子 写真=升谷玲子 編集=鈴木奈央

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