一方、論文出版数でトップを走る米国は、特許出願数では減少傾向にある。これは、次世代原子力電池の研究がすでに成熟し、民間企業主導の社会実装フェーズに移行していることや、安全保障上の観点から軍事・宇宙関連の研究成果公開が制限されている可能性を示唆している。
日本においても、東芝エネルギーシステムズなどが宇宙探査機向けに、遮蔽体の軽量化と長寿命化を両立させた「熱電変換型原子力電池(RTG)」の特許を公開するなど、独自の技術開発が進んでいる。また、最新の研究では、放射線を直接電気に変換する「放射線照射起電(radiation-volt)」技術への関心が高まっており、これまでの宇宙用途だけでなく、心臓ペースメーカーなどの体内埋め込み型医療機器への応用も視野に入ってきた 。
原子力電池の社会実装には、使用済み核燃料からの同位体回収や、核物質規制に適合した安全なサプライチェーンの構築など、克服すべき課題は多い。しかし、一度設置すればメンテナンス不要で稼働し続けるこの「究極の独立電源」は、人知の及ばない深海から過酷な宇宙空間、そして人の体内に至るまで、私たちの活動領域を広げる可能性を秘めている。これらの専門的な壁を乗り越えた先には、一度設置すれば数十年稼働し続ける「究極のメンテナンスフリー電源」が支える、新たな社会基盤が見えてくるだろう。
出典:アスタミューゼ「原子力電池に関する動向レポート」より


