ヘルスケア

2026.03.29 08:00

原子力発電所の近くに住むと、がんによる死亡率は高まるのか?

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米ハーバード大学は、稼働中の原子力発電所の近くに住む人は、遠くに住む人に比べてがんによる死亡リスクが高いことを明らかにした。

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学術誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に掲載された論文は、2000~18年にかけて全米で収集された死亡データを基に、原子力発電所への近接性ががんによる死亡率にどのような影響を与えるかを調べた、21世紀初の研究となった。

論文の筆頭著者であるハーバード大学のペトロス・クトラキス博士は、「原子力発電所の近くに住むことには、距離とともに減少するものの、測定可能ながんのリスクが伴う可能性があることが、今回の研究から示された」と述べた。

研究者らは、原子力発電所の近くに住む人ががんによる死亡率が高い理由を説明し得る他の要因についても考慮しようと試みた。例えば、喫煙率や体格指数(BMI)といったその他の生活習慣要因に加え、年齢や最寄りの病院までの距離、世帯収入、貧困レベル、人種・民族などを勘案した。これらすべての要因を考慮に入れても、がんの死亡率との相関関係は依然として見られた。

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論文の著者らは、今回の調査結果から原子力発電所ががんによる死亡率を高めていると結論付けることはできないとしながらも、因果関係を解明するため、さらなる研究を強く求めている。「今回の研究結果では因果関係を立証することはできないものの、潜在的な暴露経路や潜伏期間の影響、がん種ごとの発生率についてさらなる研究が必要であることを浮き彫りにしており、公衆衛生にとって重大でありながら見過ごされがちなこれらのリスクに対処することの重要性を示している」

このテーマについては以前から調査が行われてきたが、結論は一貫しておらず、米国での研究は多くの場合、単一の原子力発電所とその周辺地域に焦点を当ててきた。今回の論文の著者らは昨年、米マサチューセッツ州を対象とした小規模な先行研究を発表しており、そこでもがんによる死亡率の上昇と原子力発電所への近接性との間に同様の関連性が認められた。

米エネルギー情報局(EIA)によると、2023年時点で、米国には54カ所の稼働中の原子力発電所があり、28の州に少なくとも1基の原子炉が設置されている。原子力発電所の大半は、ミシシッピ川以東に位置している。

石炭、石油、天然ガスを燃焼させることで大気を汚染する火力発電所は、近隣住民の健康悪化と関連付けられることが多い一方で、原子力発電は「環境に優しい」と見なされることが多い。米国のドナルド・トランプ政権は原子力発電に極めて前向きな姿勢を示しており、昨年、同産業の振興を目的とした一連の大統領令を発表した。

クトラキス博士は、「気候変動に対する環境に優しい解決策として原子力発電が推進されている今こそ、原子力発電所と健康への影響に関する問題を扱うさらなる研究が行われることを期待する」と強調した。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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