さらに山田氏は、選手の強化にも注力している。本大会で導入された6人制(シクシーズ)のルールは、山田氏自身が世界ラクロス協会のルール委員長として五輪のためにゼロから作り直したものだ。従来の10人制では得点後に毎回中央でジャンプボールが行われ、ジャンプボールが強いチームが試合の8割でボールを支配してしまうこともあったが、6人制では得点後にキーパーから再開され、30秒のショットクロックも導入されたことで、よりスピーディで公平な展開となる。
日本の協会はこれまで培ってきた10人制の強化に重きを置いており、6人制への移行に遅れをとっている一方で、海外の競合国はすでに6人制の強化を急速に進めている。山田氏は「日本の選手たちに世界のレベルを体感してもらい、危機感を持ってもらうために、あえて本大会で6人制を採用した」と明かした。
世界一のクラブクラブチャンピオンシップへ
現在、世界の約98カ国でラクロスがプレイされているものの、クラブチームの世界チャンピオンを決める国際大会は存在していない。今後の見通しや展望について山田氏は「この『SEKAI CROSSE』を世界最高峰のクラブチャンピオンシップへと押し上げたい」と今後の展望を語る。
競技普及と育成の面では、「SEKAI CROSSEのジュニア版」の創設も構想している。「同世代で世界トップレベルの海外選手と試合ができる機会を子どもたちに提供し、彼らが目指すべき明確な目標を作りたい。スポーツビジネスとして持続的に成長するためには、良い指導者がプロとして生活できる環境を整え、ユース世代のライフスキル向上に貢献することも不可欠だ」
そして、最終的なエコシステムの完成形として、「日本から世界初のPLL・WLL(アメリカ女子プロリーグ)のプロ選手を育て、アメリカで大活躍してもらい、やがて日本に帰ってきてその価値と経験を国内のレベル向上やビジネスの広がりに還元してもらう」という長期的なスパンでのプロジェクトを描いている。他競技の事例のように「日本人のトップ選手を輩出する」といった具体的なKPIを海外リーグと共に設定し、歩みを進めていく構えだ。
「ラクロスという競技は、情熱を持った人々が集まり、新しい変化に柔軟に対応できる若いスポーツ。2028年のロサンゼルス五輪という120年ぶりの大舞台に向けて、日本国内での熱狂を生み出し、ラクロスを一時的なブームではなく『成長産業』へと昇華させたい」
山田氏と学生たちが創り上げる「SEKAI CROSSE」は、その歴史的転換点における原動力として、確かな一歩を踏み出している。


