グルメ案内の書ではなく
筆者はこのたび『ガチ中華移民 日本で増殖する「本場中華料理」の謎』(太田出版刊)という書籍を上梓することになった。
同書は、いわゆるグルメ案内の書ではない。ガチ中華というこの10年で大都市圏を中心に大量に出現した飲食店および料理、それらを提供する人たちを映し鏡として、今日の日本社会のリアルな変容を探るものである。
それは近年、にわかに政治イシュー化された「外国人問題」と「移民」をめぐる背景と内実を知ることでもある。そして、日々進行する日本の多文化社会を「見える化」し、視界を広げることで、よどんだ時代の空気を風通しよくする試みといってもいい。
ガチ中華という未知なる社会現象を取り巻くグローバルな連動を含め、中国の改革開放以降の40年間の劇的なるインパクトをともなう社会変動が生んだ、この見えにくい食をめぐる世界の内部に奇しくも分け入ることになった1人の日本人ジャーナリストによる実況レポートだと受けとめていただきたい。
同書の構成を簡単に紹介させていただきたい。まず第一章では、これまで筆者が多くの人から尋ねられた、ガチ中華にまつわる疑問を9つに整理して、簡単にお答えすることから話を始めている。
第二章では、ガチ中華と呼ばれる、多くの日本人にとって未知なる21世紀の中国を体現したグルメシーンの特徴を解説し、そうした事象が次々に日本で生まれていることの意味を考察する。
第三章では、日本各地の、特に大都市圏を中心に局所的にみられるガチ中華が出店している地域それぞれの諸相を、第四章では、ガチ中華の出現の時期や歴史的経緯を深堀りし、日本国内のみならず、世界各地にみられるグローバルな共時的現象であることを指摘している。
また第五章では、ガチ中華の主な担い手である中国の人たちの胸の内や真摯な取り組み、彼らを支える日本のグルメ愛好家やファンのコミュニティの活動を通じて、今日の多文化社会に相互に向き合う人たちの姿を紹介する。
そして終章では、さまざまな課題や矛盾を抱える、ガチ中華という現象の今後の展望や可能性を述べていくというものだ。言わばこの5年間の当コラムの集積といってもいいような内容なので、ぜひご一読いただければと思う。


