日本の伝統技術を軸にしたファッションブランドMIZENは3月20日、東京・渋谷ヒカリエで開催された「RAKUTEN FASHION WEEK」に初参加し、ブランドとして初となるランウェイ形式で2026年秋冬コレクションを発表した。ブランド創立4周年のタイミングでのショー開催となる。
コレクションテーマは「Slow Fashion」。現代のファッションがスピードや瞬間的な視覚的刺激によって評価される一方で、日本の伝統技術は本来、時間をかけて理解される性質を持つ。“一見しただけでは捉えきれない価値”を、視覚的な刺激やスピード感で評価されやすいファッションの枠組みのなかでどう表現するか。この異なる時間軸を同一の場に提示することが、今回のショーの設計思想だ。
ショーでは、同一空間で異なる速度で歩くモデルを配置する演出が採用された。速さがもたらす情報量の多さと、遅さによって一つの対象に集中する感覚の違いを表現している。
エルメス本社でレディスプレタポルテのデザイナーを務めるなど、欧州のラグジュアリーブランドで経験を積んできたMIZEN代表・デザイナーの寺西俊輔は、今回のテーマ設定について次のように話す。
「ファッションは本来、見た目の印象で評価される世界です。ただ、その背景にある素材や技術、つくられ方といった価値まで含めて捉える視点を提示したかった」
伝統技術を市場に接続する
MIZENの特徴は、デザイナー中心ではなく「技術を主役にする」点にある。コレクションでは、着物地や各地の織物、ニットを再構築したモデル「KAMUI」を軸に、染織・縫製など複数の技術を一着の中に統合。ダブルフェイスウールやシルクデニムなど新素材も取り入れながら、和洋の区分を前提としない設計がなされている。
一方で、こうした技術の価値は即時的には伝わりにくい。寺西は次のように指摘する。
「例えば大島紬の魅力は、素材を見て3秒で理解できるものではありません。知識や経験を積み重ねることで初めて分かる。その価値こそが、日本の伝統技術だと思っています」
これまでMIZENは、いわゆるファッションショーという形式から一定の距離を置いてきた。その背景には、半年ごとに新作を発表する既存のサイクルと、伝統技術の制作時間との不整合がある。



