寺西は、ファッションショーが半年に1回の新作発表を前提としている一方で、「日本の伝統技術はそのスピードに当てはまらないと考えていた」という。それでも今回、初めてファッションウィークに参加したのは、「ファッションの枠組みを通じた方が、自分たちが大事にしている価値観をより速く世界に広げられると考えた」からだ。
また、MIZENは2022年12月にオープンした青山本店を昨年4月にクローズし、今年1月に渋谷へアトリエ兼ショールームを新設した。背景には、店舗運営の負荷や人員体制の課題に加え、「作っては売る」というサイクルに偏ることで、本来のものづくりの思想との乖離が生まれていたことがある。制作と発信に軸足を移すための再編といえる。
「今までは、短いサイクルで新作が求められるファッションの世界から少し距離を置いたところで何ができるかを考えていましたが、今はその枠組みのなかで何ができるかに変わっています」
技術を主役にするという選択
今回のコレクションには、大島紬、牛首紬、久留米絣、沖縄の花織など、日本各地の織物が用いられた。量産可能な素材から、手仕事による少量生産の素材までを横断的に扱うことで、産地ごとの状況の違いも含めて提示している。

その背景には、伝統産業が抱える構造的な課題がある。
「高度な技術を持っている産地ほど、担い手不足や高齢化の問題が大きいと感じています」
こうした状況に対し、MIZENは日本の伝統技術をトレンドとして消費される衣服市場の中に位置づけることで、新たな需要と循環の構築を目指す。
「世界中の人が楽しんでいるファッションのなかに、日本の伝統技術をどう組み込んでいくか。そこに向き合っていきたいと考えています」
今回のランウェイは、その試みの出発点にあたる。スローファッションという考え方を、理念にとどめず、ファッションウィークという流通と評価の仕組みの中でどのように成立させるか。その検証として位置づけられる。
ファッションのフォーマットのなかで、その前提を問い直す。MIZENの今回の取り組みは、その可能性を示すものになったといえそうだ。


