リーダーシップ

2026.03.22 09:29

「何もしない」という選択が組織を蝕む──リーダーシップ危機の真実

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キャリアの初期、私がこれまで一緒に働いた中でも最も有能なプロジェクトマネジャーの1人が、何の前触れもなく辞表を提出する場面を目の当たりにした。理由を尋ねると、彼の答えは私を凍りつかせた。「ここに6年いるが、誰もリーダーになれるよう助けてくれなかった。いまだにタスクを管理しているだけだ」

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私はその会話を胸に刻んできた。彼には優れたリーダーの資質——知性、意欲、技術的卓越性——がすべて揃っていた。欠けていたのは、それを育てようとする人の存在だった。

30年以上にわたり、私はこの光景が業界を問わず繰り返されるのを見てきた。企業が優秀な人材を失うのは、報酬や競合のせいではない。意図的にリーダーを育成できていないからだ。経済的な損失は莫大である。問うべきは、リーダー育成が予算に収まるかどうかではない。それを無視し続けるコストを、これ以上吸収し続けられるのかどうかだ。

あなたが見過ごしている最重要の数字

あるデータが、私のリードの仕方を一変させた。数百社・数百万人規模を対象にしたGallupの調査によれば、マネジャーは事業部門間の従業員エンゲージメントスコアの差のうち、少なくとも70%を説明するという。

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この意味をよく考えてほしい。同じ資源、同じ人材、同じ市場環境でも、あるチームが成長し、別のチームが苦戦することがある。その差はたいていリーダーシップにある。10回中9回は、リーダーが原因だ。

私が懸念するのはここである。企業は技術的な有能さを理由に人を昇進させ、チームが停滞すると驚いたように振る舞う。CMIは、マネジャーの82%が「偶発的マネジャー(accidental managers)」だと報告している。DDIのGlobal Leadership Forecastは、マネジャーへの信頼が弱いことを示す。この組み合わせは危険極まりない。

エンゲージメント危機の正体は「リーダーシップ問題」だ

2025年時点で、エンゲージしていない従業員は企業に約2兆ドルの損失をもたらしている。職場でエンゲージしている労働者は31%にとどまる。世界全体ではさらに深刻で、エンゲージしている従業員はわずか21%。世界経済に与える損失は8兆9000億ドル——世界GDPの9%に相当する。

多くの企業は、軽食、ノベルティ、柔軟な金曜日、卓球台といった「特典」でエンゲージメント低下を金で解決しようとする。しかしそれは見た目を整える装飾にすぎない。マネジャーが明確な優先順位設定を支援してくれる従業員は、仕事にエンゲージする可能性が17倍高い。エンゲージメント危機は従業員の問題ではない。リーダーシップの問題であり、そのコストは毎日積み上がっている。

離職の本当のコスト

多くの経営幹部に離職コストを尋ねると、採用手数料の話が返ってくる。だが、それでは大半を見落としている。SHRMは、代替要員の補充コストを年収の50%〜200%と推計しており、請求書には現れないコストが相当割合を占める。

Gallupのデータはさらに耳が痛い。自発的離職の理由の少なくとも75%は、マネジャーが影響を与えられるという。私自身、現場で何度も見てきた。仕事自体は好きでも、上司に耐えられず、明確に「悪い上司」が理由で辞める人がいる。人は会社を辞めるのではない。リーダーを辞めるのだ。

拙いリーダーシップが日々生む「生産性税」

拙いリーダーシップは、人を組織から追い出すだけではない。残る人々も消耗させる。Gallupのメタ分析は、エンゲージメントの高いチームは、エンゲージメントの低いチームに比べて生産性が18%高く、収益性が23%高いと示した。これは「人事の話」ではない。パフォーマンスの話である。

Gallupはまた(ダウンロードが必要)、エンゲージしているチームは収益性が21%高く、生産性が17%高いことを確認している。これは僅差ではない。あらゆる部門、あらゆる四半期、あらゆる年にわたり、複利で効いてくる。

30年を経て学んだこと:本当の問題はスキルではない

私が向き合わざるを得なかった最も厳しい真実がある。多くのリーダーシッププログラムは、誤った問題を解こうとしている。戦術を教える。コミュニケーションのフレームワークを教える。時間管理を教える。もちろんそれらには価値があるが、根本原因を外している。あなたの組織で苦戦しているマネジャーが失敗しているのは、スキル不足だからではない。自分自身をリーダーとして認識する許可を、一度も与えられたことがないからだ。

リーダーシップの専門家はこれを「アイデンティティ・ギャップ」と呼ぶ。技術的な有能さと、自分をリーダーだと感じる内的な感覚との間にある空白である。だからこそ、優秀な人材が昇進した途端に固まってしまう。初めてマネジャーになった人の約60%は、リーダー職に就いた際に研修を受けていないと答えている。組織で最も難しい仕事に人を就かせ、そのまま放置しているのだ。

問うべきは「投資できるか」ではない

自社の組織を振り返ってほしい。多くのマネジャーは、優秀な個人貢献者だったからこそ、その役割に昇進している。そしてエンゲージメントが低いチームでは、離職が増え、レビューには答えのない不満が並ぶ。

ここで自問すべきだ。何もしないことのコストはいくらか。リーダーシッププログラムの費用ではない。プログラムが「存在しない」ことによるコストはいくらか。その答えはすでに貸借対照表にある。ただ、どこを見ればよいか分かっていないだけかもしれない。

リーダーシップは生まれつきの権利ではない。学び、育成できるスキルである。出発点は、マネジャーは壊れているのではないと信じることだ。彼らは育成が不足している。これは解決可能な問題である。

いま失っている人材は、競合へ移っているのではない。埋めてこなかったリーダーシップの欠落が原因で去っている。まずはそこから始めよ。

forbes.com 原文

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