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2026.03.21 13:00

トルコの原子力発電所建設計画 華麗な戦略か、規制上の悪夢か

トルコ南部で建設中のアックユ原子力発電所(adlaphotography/Getty Images)

トルコ南部で建設中のアックユ原子力発電所(adlaphotography/Getty Images)

トルコは現在、4カ国から4種類の異なる原子力技術を同時に導入しようとしている。これは、同国を最も洗練されたエネルギー多角化の推進者とするか、あるいは2030年に向けた発電容量目標を脅かす、規制上と財政上の障害を生み出すかのいずれかとなるだろう。

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米ブルームバーグ通信は13日、トルコのアルパルスラン・バイラクタル・エネルギー相が韓国電力公社に対し、年末までに法的拘束力のある建設提案を提出するよう求めていると報じた。その数日前、同相は仏パリに滞在し、フランス電力公社(EDF)と小型モジュール炉(SMR)に関する覚書の骨子を詰めていた。それに先立ち、カナダのキャンドゥエナジーは4日、トルコ原子力公社(TUNAS)とひそかに独自の協力協定を締結していた。一方、ロシア国営原子力企業ロスアトムが手がけるトルコ初の原子力発電所であるアックユ発電所は、建設が予定より数年遅れており、いまだに稼働していない。

多角化の論理は確かに存在する。だが、実行上の課題も同様に現実的な問題だ。

「ロスアトムのわな」からの脱出

アックユ原子力発電所は、トルコの資産ではない。同発電所はロスアトムが所有し、燃料サイクルを管理し、運転のペースを決定する「建設・所有・運営(BOO)」方式に基づいて建設されたもので、トルコ領内にあるロシアの飛び地と言わざるを得ない。トルコはロスアトムから電力を購入する。鍵を握っているのはロシア側だ。

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ロシアが予測可能な国であった頃は、こうした取り決めも政治的に受け入れ可能だった。だが、トルコのドローン(無人機)がシリアでロシア寄りの勢力を攻撃し、黒海が争奪戦の舞台となり、イランを巡る混乱によって中東のエネルギー情勢の想定の脆弱(ぜいじゃく)性が露呈する中、事態の構造は一変している。トルコ政府による多角化への取り組みは、単なる見せかけの外交ではない。これは、真の戦略的圧力の下で行われた主権的な判断だ。

問題は、トルコが多角化すべきかどうかではない。当然、そうすべきだ。問題は、互いに相容れない4つの原子炉システムを同時に追求することは、主権への道なのか、逆に主権から遠ざかる道なのかということだ。

「バベルの塔」の様相を呈するトルコの原子力計画

外交上の声明には表れない、技術的な実情について解説しよう。トルコが誘致しようとしている各業者は、単に異なるハードウエアを使用しているだけではない。これらは全く異なる設計理念と規制基準に基づいている。

アックユ原子力発電所は、ロシア型加圧水型原子炉(VVER)技術を採用し、ロシア国家標準規格(GOST)に基づいている。韓国の加圧水型原子炉APR1400は、米機械学会(ASME)の技術基準に基づいている。EDFが提案するSMRは、フランスの原子力安全基準であるRCC-Mを採用している。カナダ型重水炉(CANDU)は重水物理学という、独自の燃料サイクルの仕組みや予備部品の供給体制、運転員の訓練要件を持つ、原子炉工学の独立した分野を採用している。

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翻訳・編集=安藤清香

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