毎年、日本のどこかで線状降水帯が発生し、何日にもわたる集中豪雨の深刻な被害に見舞われるようになった。そこで、東北大学、千葉大学、法政大学、カリフォルニア大学、富山大学、京都大学による共同研究グループは、スーパーコンピューター内に再現した線状降水帯を使って、被害を緩和させる技術のシミュレーション実験を行った。人工雨を降らせる技術を応用したものだ。
研究グループは、スーパーコンピューター上で気象モデルWRF(Weather Research and Forecasting model)を使い、2014年8月に発生した広島豪雨の線状降水帯を再現し、その発生中の積乱雲に大量の雲の種(ドライアイス)を投入する「クラウドシーディング」を実施して観察した。
クラウドシーディングとは、雨を降らせたいときに空にドライアイスなどの雲の種を撒いて人工雨を降らせる技術だが、ここで行われたのは、あえて雨雲に雲の種を大量に撒くことで、水蒸気を多くの氷の粒に分散させて雨が降らないよう抑制し、雨雲の一部を風下に流して豪雨の範囲を分散させる「オーバーシーディング」だ。
シミュレーションでは、風上側の地上約7〜8キロメートル付近の広い範囲に雲の種を撒いたときに効果がもっとも大きく、結果として、豪雨域の3時間雨量が平均11.5パーセント、最大で32パーセントも減少した。さらに大量の種を撒くと、雨粒の成長が抑えられ、雨が風下へ分散する仕組みが明らかになった。
実際にどれだけの量のドライアイスを撒けばいいかを計算したところ、小型のビジネスジェットに搭載できる程度であることがわかった。今後は、雲の種の輸送や散布を含めた現実的な再現モデルの開発を行い、検証を進めるとのことだ。
研究グループは「気象を予測するだけでなく制御する技術体系の確立を通じて、極端風水害の脅威から解放された社会の実現を目指します」と話している。



