経済

2026.03.19 09:30

ホルムズ海峡封鎖への対処法は「時間稼ぎ」のみか 代替案も穴埋めには不十分

ホルムズ海峡周辺の地図(Getty Images)

UAEとイラクのパイプライン

アラブ首長国連邦(UAE)もホルムズ海峡の迂回ルートを運用しているが、サウジアラビアと比較すると小規模だ。ハブシャン・フジャイラ・パイプラインは、UAEの首都アブダビ南西のハブシャン油田とホルムズ海峡の外側にあるフジャイラ港を結んでいる。同パイプラインの輸送能力は日量約150万バレルだが、既に大部分が稼働している。

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イラクにとって唯一の現実的な代替ルートは、トルコを経由して北上し、地中海沿岸の港湾都市ジェイハンに至るパイプラインだ。だが、イラク北部のクルド自治区との長年にわたる政治的対立により同パイプラインの輸送量は制限されており、設備面の制約から、当面の間は現実的に輸送できる量はごくわずかにとどまる見通しだ。

これらの代替ルートを総合的に見ても、平常時にホルムズ海峡を通過する膨大な貨物量を鑑みると、部分的な緩和にしかならない。

最大の課題は天然ガス

石油輸送は大きな課題だが、さらに困難なのは天然ガスだ。カタールは世界有数のLNG輸出国で、世界のLNG貿易の約20%を占めている。通常、カタール産LNG貨物のほぼ全てがホルムズ海峡を通過している。

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石油とは異なり、LNGの供給網は高度に専門化されており、柔軟性に欠ける。LNGの生産施設、液化プラント、タンカー、受入ターミナルは全て連携して稼働しなければならない。

カタールのLNG出荷が中断された場合、その不足分を迅速に補うことのできる余剰生産能力は、他の地域にはほとんどない。その結果、米国やオーストラリアなど他の輸出国の間で貨物を巡る激しい競争が生じ、価格が急騰し、一部地域では産業消費者が操業を縮小せざるを得なくなるかもしれない。

市場が容易に埋められない不足分

戦略石油備蓄の放出や代替輸出ルートの確保を考慮しても、数字は厳しい現実を語りかけてくる。最も楽観的なシナリオでは、緊急措置によって、通常ホルムズ海峡を通過するエネルギー資源のうち、日量約1000万バレルを代替できる可能性がある。それでも、国際市場では日量1000万バレル以上の供給不足が続くことになる。

歴史が示すように、エネルギー輸送の要衝での混乱は長期的な影響を及ぼし得る。1956年のスエズ危機と67年の第三次中東戦争の際にスエズ運河が閉鎖されたことで、船舶はアフリカを迂回する航路を余儀なくされ、輸送時間と費用が劇的に増加した。80年代のイラン・イラク戦争中のいわゆる「タンカー戦争」の際、ペルシャ湾での石油輸送船に対する攻撃は、ホルムズ海峡自体は開通していたにもかかわらず、市場を動揺させた。

今日のホルムズ海峡の重要性は、かつてとは比べものにならないほど高まっている。これほどまでに世界のエネルギー供給を遮断できる立場にあった国は、かつてなかった。

長期にわたる混乱は、世界の農業にも波及するだろう。ホルムズ海峡を経由して輸送される肥料や石油化学製品の原料の入手が困難になり、エネルギー危機が最終的に食料価格の高騰につながるリスクが高まる。

この規模の供給危機は、短期的には通常2つの結末しかあり得ない。1つは価格が需要を押し下げるほど高騰すること、もう1つは混乱した輸送ルートが復旧することだ。そのいずれかが起こるまでは、世界は時間との戦いを強いられる。

さらに2つの要因が打撃を多少和らげる可能性はあるが、いずれも大きな不確定要素だ。1つは、広範囲にわたる供給混乱が生じても、イランが一部の顧客に対する原油輸出を継続するかどうかだ。もう1つは、中国が価格上昇の影響を緩和するために、自国の戦略石油備蓄をどの程度活用するかという点だ。

しかし、双方の可能性を考慮したとしても、残りの供給不足を埋めるにはほとんど役立たないだろう。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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