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2026.03.17 20:41

女性は交渉が下手なのではない。彼女たちに不利に働く「仕組み」がある

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男女の賃金格差を埋めるために導入された政策が、むしろ逆の結果を招いている可能性がある。今年発表された研究はそう示唆している。

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約1000万件の求人情報を分析した結果、給与レンジが広い求人は女性の応募意欲を不均衡に低下させることが明らかになった。女性が給与レンジの広い職種に応募した場合、男性よりも交渉が控えめになり、初任給も低い水準で受け入れる傾向がある。ここから浮かび上がるのは憂慮すべき循環だ。女性を助けるはずの透明性が、長期的には女性の収入を損ねている可能性がある。

問題は透明性そのものではない。研究の共著者で、コーネル大学ILRスクール(労使関係学部)の組織行動学助教授であるアリス・J・リーは筆者にそう語った。問題は、レンジが広いことで生まれる曖昧さだという。

「大きな成長機会があることを示したくて、広いレンジを提示するのです……しかし、それが慎重な人たちにはネガティブなシグナルとして伝わり得ることに気づいていません」とリーはZoomインタビューで述べた。

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15の州とワシントンD.C.では、雇用主に給与レンジの開示を義務づける法律があるが、そのレンジをどれほど広く、あるいは狭くすべきかについては何も定めていない。これにより企業には極めて大きな裁量が与えられる。年収6万ドルから12万ドルというレンジの求人でも、法律上は要件を満たす。しかしそれでは、企業が実際にいくら払う意図なのか、候補者にはほとんど何も伝わらない。

その結果、職場の多様性が低下し、企業にとって大きな価値をもたらす可能性のある応募者を組織的に遠ざけることになりかねない、とリーは指摘する。

「それは透明性ではありません」と、交渉におけるジェンダー・ダイナミクスを研究するデューク大学フクア・スクール・オブ・ビジネスの教授、アシュリー・シェルビー・ロゼットはZoomインタビューで語った。「それは"見せかけの遵守"です」

数十年にわたる研究は、女性は男性より交渉にためらいがちで、交渉するとしても要求額が小さくなりやすいことを示している。だが問題が女性や交渉スキルにあるのではなく、交渉が始まる前から「可能性」を狭めてしまうような、雇用主が用意する仕組みにあるとしたらどうだろうか。

実際、リーの研究では、女性は一貫してレンジの狭い求人をより好むこともわかった。そうした求人では、候補者のカウンターオファーが低くなりがちで、そもそも交渉に踏み込まない可能性も高い。

「女性を責めるべきではありません」と彼女は言う。「むしろ雇用主や企業がつくり上げた制度的な配置が、人々を特定の状況へと振り分け、交渉力を最大限に発揮することを抑え込んでいるのかもしれません」

だからこそ筆者の仕事は、構造的な権力に重きを置いている。壁を突破する女性は、必ずしも最も野心的な人ではない。仕事の「構造的な次元」──スコープ、ペース、可視性、リスク、評価、そして離脱──を再交渉する術を学ぶ人たちだ。

賃金の透明性は、格好のケーススタディである。この政策自体は、報酬の可視性という構造的条件を変えた。だがレンジ設定を雇用主の裁量に大きく委ねる設計だったため、女性に不利に働きやすい新たな構造的障壁を生んでしまった。そして、仕事の条件が精密に定義されないとき、誰かがその曖昧さを埋めることになる──そしてそれが、権力の小さい側であることはほとんどない。

リーの研究は、雇用主に対して比較的シンプルな介入策も示している。求職者により多くの情報を与えることだ。たとえば、レンジを左右する要因(関連経験のある典型的な在職者が期待できる報酬など)を説明する補足文を企業が記載すると、応募率におけるジェンダーギャップは縮小する。

ただし、求職者は企業が正しい対応をするのを待つ必要はない。給与レンジが広い求人に応募するときに考慮すべき点を挙げよう。

相手の基準ではなく、自分の「アンカー」を持ち込む

給与レンジが広い場面で候補者ができる最も重要なことは、自分の数字を持って臨むことだ。雇用主が提示するレンジに向き合う前に、職種、レベル、勤務地における市場相場を独自に調べる必要がある。転職支援コーチのステファニー・チッコーネ=ナシメントは、心地よいと感じる水準より10〜20%高い個人目標を設定するよう、クライアントに助言している。雇用主のレンジは相手の枠組みである。あなたのアンカーは、あなた自身のものであるべきだ。

早い段階で率直な質問をする

レンジが広い場合、オファー段階まで待って明確化を図るべきではない。最初にこう尋ねよう。「候補者は通常このレンジのどのあたりに収まるのか」「この職務のレベルはどれか」「レベリングは報酬にどう反映されるのか」。こうした質問は精緻さを示し、企業が報酬の考え方をきちんと設計しているのか、それとも広いレンジが組織の曖昧さの表れなのかを明らかにする。

レンジ以上に「レベリング」が多くを語る

レベリングが給与を決める。職務がどのレベルに位置づけられているかを理解できれば、次のレベルへ無理に跳ね上がろうとするよりも、そのレベルの上限を狙える。次のレベルでは、仕事のスコープ自体がまったく異なる可能性があると、チッコーネ=ナシメントはZoomインタビューで述べた。企業がレベルと報酬の対応について基本的な質問に答えられないなら、それは職務がどう評価されるのか、そして昇進がどれほど難しいのかについて、重要な手がかりとなる。

「やめておこう」という反射を抑える

「交渉の場に入る前に、私たちはしばしば自分自身と交渉してしまうのです」とロゼットは言う。「それもまた、自分自身を負かす手段のひとつです」。彼女は、広いレンジは離れる理由ではなく、検証すべき前提の集合として扱うべきだと主張する。応募し、対話し、その曖昧さが意図的なものなのか、単に杜撰なだけなのかを見極めたうえで、判断すればよい。

「企業はそれを当然のこととして期待しています。あなたが交渉しているかどうかにかかわらず、彼らはあなたと交渉しているのです」とチッコーネ=ナシメントは言う。女性にとっての問いは、ゲームに参加するかどうかではない。誰かに条件を決めさせるのかどうか、である。

forbes.com 原文

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