イーサリアムかカントンか:機関投資家向けブロックチェーン、2つの道

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世界の金融システムはいま、大規模なインフラ更新のただ中にある。銀行、取引所、清算機関は、国債から担保管理に至るまで、100兆ドル超の世界証券市場の一部を、ブロックチェーンを基盤とするレールへ移す実験を進めている。

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この移行を担うべく、ブロックチェーンのプラットフォームは競争を激化させている。その1つがカントン・ネットワークだ。デジタル・アセットが開発した同プラットフォームは、BNPパリバゴールドマン・サックス、そして米国証券市場の中核清算インフラである証券保管振替機関(DTCC)など、主要金融機関からの支援を集めている。

うたわれる価値は、決済の高速化、プログラム可能な資産、そして金融の配管(プランビング)の効率化である。過去10年の大半にわたり、ブロックチェーンは伝統的金融への挑戦として語られてきたが、その論争は概ね次の段階へ移った。

いま本質的な問いは、金融がブロックチェーン技術を採用するかどうかではない。どの種類のブロックチェーン・アーキテクチャが、その基盤となるのかである。

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一方には、イーサリアムのようなパーミッションレス(許可不要型)ネットワークがある。これはオープンなアクセス、公的な検証、そしてプログラム可能な金融アプリケーションのために設計された、世界的に分散したインフラだ。

もう一方には、カントンのような機関主導型ネットワークがある。これは規制上のコントロールと取引のプライバシーを維持しながら、分散型台帳技術を金融市場へ取り込むことを目的に設計されている。

この分断は、次世代の金融インフラをどのように構築するのかという、より深いアーキテクチャ上の選択を反映している。

信頼のスペクトラム

インフラ提供企業ファイアブロックスの調査は、イーサリアムやソラナのような完全なパーミッションレスのシステムから、カントン・ネットワーク、R3のコルダ、J.P.モルガンのキネクシス・プラットフォームのような機関向け分散型台帳まで、多様なブロックチェーン・ネットワークを描き出している。

それぞれのモデルは、信頼に関する異なる理論を反映している。

イーサリアムは、中央集権的な仲介者への依存を最小化するために設計された。Linux FoundationのDecentralized Trust(分散型信頼)イニシアチブが主催した最近のパネルディスカッションに加え、インタビューの中で、イーサリアム共同創設者のジョー・ルービンは、暗号資産ムーブメントは中央集権的な機関への信頼喪失から生まれ、その結果、開かれたプロトコルと分散型コンセンサスによって信頼を担保できるシステムを開発者が構築するようになったと述べた。

同じパネルで、DTCCの清算・証券サービス部門プレジデントであるブライアン・スティールは、今日の市場の運用上の現実を説明した。DTCCは米国証券市場の中央清算・決済インフラであり、毎日数百万件の取引を処理している。

「この会社は信頼の上に成り立っている」とスティールは述べ、DTCCの決済システムが機能していなければ米国株式市場は事実上開場できない、と指摘した。

ブロックチェーンの採用によって、投資家が直接保有する暗号資産型のベアラー資産につながるのかと問われると、スティールは率直に答えた。

「ベアラー証券をつくるのか? いいえ、つくらない」と彼は言った。「規制当局が受け入れやすいのと同じKYC(顧客確認)とAML(マネーロンダリング防止)の境界をつくっているのだ」

こうした機関としての本能が、研究者がしばしば機関向け、あるいは企業向けブロックチェーンと呼ぶものの開発を後押ししてきた。すなわち、分散型台帳技術の要素を取り入れつつ、伝統的金融のガバナンス構造を維持するシステムである。

プライバシー対透明性

DTCCが、トークン化された米国債担保やその他の金融商品を支えるためにカントン・ネットワークを利用する計画を発表したことで、このアーキテクチャ上の分断はより明確になった。

取引が単一の世界的に可視な台帳に積み上がっていくイーサリアムとは異なり、カントンは取引レベルでプライバシーを保つよう設計されている。

大規模な金融機関にとって、この水準の秘匿性は不可欠である。大口取引を執行する銀行は、完全に透明な台帳上に機微なポジションや顧客データをさらすわけにはいかない。

インタビューで、カントン・ネットワークのエグゼクティブ・ディレクターであるメルビス・ランギントゥオは、同ネットワークは金融機関がインフラを共有しつつ、取引データについては厳格な秘匿性を維持できるよう設計されていると語った。

Web3のエコシステムの一部開発者は、このモデルを批判してきた。グローバルに共有された状態(グローバル・ステート)を欠くシステムでは、独立した検証がより難しくなるという主張である。

機関向け台帳の支持者は、大規模な金融市場には厳格な秘匿性と規制当局の監督が必要であり、そうした機能はパブリック・ブロックチェーンが当初想定していなかったものだ、と反論する。

同時に、パブリック・ネットワークに取り組む開発者はプライバシーのギャップを埋めようとしている。AztecやZamaなどのプロジェクトが開発を進めるゼロ知識証明や完全準同型暗号は、オープンなブロックチェーン・ネットワーク上で決済しながら取引を秘匿化することを目指す技術である。

「トークン化株式」の実態

今日の金融市場では、ほとんどの投資家は法的に株式を直接保有していない。その代わり、階層化された清算システムの中で、ブローカーやカストディアンを通じて発行される「有価証券の権利」(セキュリティ・エンタイトルメント)、すなわち請求権を保有している。

DTCCのような機関がトークン化を検討する際、裏付けとなる証券は通常、既存のカストディ・インフラの中に固定されたままである。ブロックチェーンの台帳が表すのは資産そのものではなく、資産に対するデジタルな請求権だ。

このデジタルツインのモデルは、金融機関が、決済、担保管理、ポストトレード(取引後)インフラを近代化しながらも、現在の世界証券市場を支える仲介構造を解体せずに済むことを意味する。

別のアプローチとしては、資産がブロックチェーン・ネットワーク上にネイティブに存在し、投資家がデジタルウォレットで直接保有する「直接所有」のトークン化があり得る。しかしこのモデルは、運用面と規制面の課題を持ち込む。

Linux FoundationのDecentralized Trustイニシアチブのエグゼクティブ・ディレクターであるダニエラ・バルボサは、インタビューで、世界の大半の金融機関は、セルフカストディ(自己管理)が広がることに伴う受託者責任上および運用上のリスクを、まだ吸収できる構造になっていないと語った。

イーサリアムの反攻

パーミッション型ネットワークの台頭にもかかわらず、パブリック・ブロックチェーンが脇に追いやられているわけではない。多くの金融機関は、両モデルを同時に試している。

規制下の決済レイヤーはプライベート・インフラが担い、パブリック・ネットワークはグローバルな流動性とプログラム可能な金融アプリケーションへのアクセスを提供する、という役割分担もあり得る。

複数の大手資産運用会社はすでに、イーサリアム上でプロダクトを立ち上げている。ブラックロックはトークン化マネー・マーケット・ファンドのBUIDLを導入し、ローンチ後まもなく運用資産が5億ドルを超え、セキュリタイズを通じてイーサリアムのインフラ上で稼働している。

フランクリン・テンプルトンは、オンチェーン米国政府マネー・ファンドを、イーサリアムおよびそのレイヤー2スケーリング・ソリューションを含む複数のパブリック・ブロックチェーン・ネットワークへ拡大した。

これらの取り組みは、パブリック・ブロックチェーンのインフラが、形成されつつあるトークン化資産エコシステムの重要な構成要素になり得ることを示唆している。インタビューでルービンは、彼が「ネイティブな貨幣循環」と呼ぶものを説明した。ステーブルコインからトークン化資産まで、イーサリアム上の経済活動が、ネットワークの基盤となる決済資産としてのETHへの需要を生み出すという考え方である。

プログラム可能な金融が拡大し続けるなら、その経済活動は世界の金融市場におけるイーサリアムの役割を高め得る、と彼は主張する。

高い壁か、開かれた道か

金融システムはいま、根本的に異なる思想に基づく、複数のブロックチェーン・アーキテクチャを試している。

オープンなブロックチェーン・ネットワークと、規制下の機関向け台帳は並行して進化しており、市場の異なる部分に対して、それぞれ異なる問題を解いている。

どのモデルが最終的に世界金融の支配的インフラになるのかは、なお開かれた問いである。

ただし、1つだけすでに明らかなことがある。ブロックチェーンが金融を変えるかどうかの議論は、もはや過去のものだ。すでに変えている。

いまの本当の競争は、新しい金融システムのレールを誰が設計するのか、そしてどのアーキテクチャが市場、機関、社会に最大の効用をもたらすのか、という点にある。

その結末を左右するのは技術だけではない。どのシステムを許容し、奨励し、あるいは制限するのかを決めるユーザー、機関、政策立案者の選択でもある。

当面、金融の未来をめぐるアーキテクチャの戦いは続く。

forbes.com 原文

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