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2026.03.22 12:00

嘘をついても相手との関係性が深まる「向社会的な嘘」とは?

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大半の人は、正直なのは良いこと、嘘をつくのは悪いことであり、強固な人間関係は真実を語ることで築かれるという美しい道徳のもとで育つ。これは真っ当な考え方だ。ただ、多くの心理学研究によると不完全な考え方でもある。

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欺瞞(ぎまん)に関する科学研究は、単に嘘の大小だけではなく、自分のための嘘と他人のための嘘を区別する必要があることを示している。そして研究によると、後者のタイプ、つまり研究者が「向社会的な嘘」と呼ぶものは、通常私たちが警戒する欺きとは全く異なる働きをする。適切な条件のもとでは、この種の嘘は人間関係を壊さない。むしろ関係を深める。

向社会的な嘘とは

向社会的な嘘とは、主に自分以外の誰かの利益になる虚言だ。例えば、本当は好きではない友人の新しい髪型を褒めたり、プレゼン前に緊張している同僚に、大丈夫だろうかと思っていても「きっとうまくいく」と励ましたり、高齢の親族から贈り物をもらい、「まさに欲しかったものだ」と返したりすることだ。

これらは自己を犠牲にした芝居ではない。むしろ、正直さと優しさの間で日常的に行われている小さな折衝であり、このような嘘は驚くほど一般的なものだ。専門誌『Journal of Personality and Social Psychology』に掲載された研究によると、人はおよそ社会的やり取りのおおよそ5回に1回は嘘をつくという。さらに重要なことに、そうした嘘のかなりの割合が、欺く側ではなく欺かれる側の利益のためのものであると指摘されている。

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向社会的な嘘が心理的に特別なのは背後の動機ゆえのことだ。そうした嘘は利己心からではなく、共感や相手を傷つけないようにしようという意図からきている。この動機の違いが人間関係において嘘がどのように作用するかを大きく変える。

向社会的な嘘が信頼を生む背景

向社会的な嘘に関して矛盾しているように見える最も興味深い要素が、『Organizational Behavior and Human Decision Processes』に掲載された画期的な研究で示されている。

一連の実験で研究者たちは、相手の利益のためにつく向社会的な嘘は実際には信頼関係を強めることを発見した。向社会的な嘘を目にしたりつかれたりした参加者は、厳しい真実を伝えられた人よりも嘘をついた人を後に信頼する傾向にあった。

このメカニズムは意味深だ。実験参加者は「正直さ」そのものではなく、善意に反応していた。たとえ欺瞞であっても、その行動の動機が明らかに相手のウェルビーイングを意図している場合、その人に対する信頼は高まる。研究は、身近な人の評価においては正確さよりも意図のほうが重要であることを示している。

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翻訳=溝口慈子

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