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2026.03.22 12:00

嘘をついても相手との関係性が深まる「向社会的な嘘」とは?

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前述のレビュー研究では、向社会的な嘘が裏目に出る条件も明確に特定している。
それは、相手にとって真実が役立つとき、あるいは嘘が「相手は現実を受け止められない」と示唆するときだ。このような場合、向社会的な嘘は上から目線のもの、あるいは相手の自律性よりも嘘をつく側の安らぎを優先する行為として受け取られる。

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例えば、患者を悲しませないために重大な診断を隠す医師は思いやりのある嘘をついているのではない。相手の同意なしに重大な判断を代わりに行っていることになる。パートナーを心配させないために仕事の失敗を隠す人は優しいのではない。本質的に、共有する人生の真実を相手に打ち明けることはできないと判断しているのだ。
真の向社会的な嘘と保身の嘘を分ける境界線は、嘘をつかれる側の情報に対するニーズにある。真実が相手の意思決定や何か難しいことへの準備、あるいは主体的に意味のある行動を取ることに真に役立つ場合、真実を隠すことは思いやりではなく支配の行為になる。

人間関係における向社会的な嘘の役割

この研究の実践的なポイントは「嘘をついてもよい」という許可ではなく、私たちが単純化しがちな道徳の複雑さを見直すことにある。

徹底した正直さを肯定する文化、つまり真の人間関係には常に全てをありのままを打ち明けることが不可欠だと主張する考え方には、人間関係が実際にどのように成り立っているかという本質的なものが欠けている。 親密さを育む誠実さと、他者の感情を犠牲にしてまで自己表現をしたいという欲求を満たすための誠実さとの間には重要な違いがある。

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向社会的な嘘は、真に相手に意識を向けてのもので、しかも真実が実際には役立たない場合には、おそらく社会的知性の一形態だ。それは、相手の感情的ニーズを読み取り、相反する倫理的義務や誠実であるべき義務、そして不必要な害を与えないようにする義務を天秤にかけ、関係を最も優先して行動する能力を示している。

研究が示しているのは、正直さの本当の意味をより深く理解する必要があるということだ。真実を語ることは、それだけでは価値がない。多くの場合、互いの信頼を支え、正確な情報に基づいて行動をとれるようにし、本当に理解されていると感じられるときに価値を持つ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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