この研究結果は、専門誌『Current Opinion in Psychology』に2022年に掲載されたレビューによってさらなる発見につながった。向社会的な欺瞞に関する多くの研究を統合したところ、次の結論が得られた。究極的には、相手を感情的な傷から守るために嘘をついた場合、そしてそうした嘘が本来なら不必要な苦しみを防ぐものである場合、それらは裏切りではなく、思いやりの行為として受け止められる傾向がある、というものだ。
この観点から、向社会的な嘘が相手への思いやりからくるものであれば、思いやりのある人ほど向社会的な嘘をつく頻度が高くなるはずだ。実際、専門誌『Journal of Experimental Psychology: General』に掲載された研究はその通りであることを確かめた。
3つの研究で研究チームは次のことを発見した。思いやりは、実験的に誘発された場合でも、人格特性からくるものである場合でも向社会的な嘘を増加させる原因となる。つまり、誰かに強い共感を抱いた人は相手を守るための誇張されたフィードバックを伝える傾向が強かった。それは、相手に感情的な傷を負わせてしまう可能性に対する感受性が高まっていたためだ。
言い換えると、向社会的な嘘は、優しさに見せかけた性格の欠陥ではない。多くの場合、それは道徳心からくるものであり、共感と真実を伝えたいという願望が交錯した結果の行動だ。
向社会的な嘘を好意的に受け止める理由
向社会的な嘘が好意的に受け止められるのには深い進化論的な理由がある。人間の社会生活は誰が自分の味方なのかを見分ける能力に大きく依存している。私たちは善意、そして相手の行動が全体として自分の利益のためのものなのかどうかのシグナルに非常に敏感だ。
向社会的な嘘は、まさにそのシグナルを送る。厳しい真実をオブラートに包んで伝える、相手を傷つける意見をあえて言わない、重要な場面の前に相手が自信を持って臨めるよう相手の能力を誇張するーー。こういった行動は、その人が相手をいかに大切に思っているかを示している。嘘そのものは副次的な情報だ。本当に示しているのは、その人は正確であることよりもあなたの感情を大切にしているということだ。
これが、利己的な嘘と向社会的な嘘が全く別物に感じられる理由だ。誰かが保身のために嘘をついたと分かれば、私たちは騙され、操作されたと感じる。だが私たちの感情を守るための嘘だと分かると、大半の人は心を動かされる。 たとえ、理論的にはどちらも真実を隠蔽していてもだ。
だが研究は、向社会的な嘘を無条件に肯定しているわけではないことをはっきりさせておきたい。重要なのは状況だ。


