リーダーシップ

2026.03.15 00:18

ダボス会議で得た気づき──リーダーが知るべき「人」の力

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マリア・トロチメズク(María Trochimezuk)、フルサービスのコミュニケーション・コンサルティング会社Bravo Story創業者。多様なSTEM人材のためのプラットフォームIOScholarshipsも運営する

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ダボスのようなイベントが強い力を持つ理由は「密度」にある。首相、ノーベル賞受賞者、フォーチュン500企業のCEO、そして私が何年も追いかけてきた創業者たちが、突然、歩いて行ける距離に全員そろっていたのだ。さらに意外だったのは、多くの人が心を開いていたことだ。好奇心があり、腹を割って話そうとする。何か目的があって話す、という感じでもない。

テクノロジーがほとんどすべてを代替できると考えられている世界において、物理的に同じ場所にいることは今なお重要である。通常なら調整に何カ月もかかる会話が、廊下で、コーヒーを飲みながら、あるいはレセプションで実現した。

最も驚いたのは、その場の空気感だった。冷たくも、取引的でもない。人間味があった。人々は本当に互いに関わろうとしていた。

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テクノロジーに取りつかれた世界であっても、近さには力があることを思い出させられた。信頼はより早く築かれ、アイデアもより速く動く。私は、これから何が起きるのか、そして何を変える必要があるのかを、より鮮明に捉えた状態でその場を後にした。

心を開き、準備していれば新たな機会を引き寄せられる

ダボスは受け身ではいられない。本気で「来ている」状態にならなければ、得るものは少ない。明確なアジェンダと大きなエネルギー、そして見知らぬ相手に何度でも躊躇なく話しかける姿勢が必要だ。

それを実行し、少し運にも恵まれれば、尊敬する企業をスケールさせた人物から率直な助言をもらえるかもしれない。あるいは、STEM業界を形作った仕事をした人物に偶然出会うこともある。

ここでは、ダボスの外でもリーダーがこのマインドセットを生かすための実践的な方法をいくつか紹介する。

「来ている」つもりで事業を動かす

相手が来るのを待ってはいけない。会話を仕掛けるのだ。

職場では、例えば次のような形になる。

• 問題が起きたときだけ会うのではなく、先回りして1on1を設定する

• 必要になる前に、潜在的なパートナーに連絡する

• 「私に何を求めていますか?」ではなく「今、何をつくっているのですか?」から会話を始める

テクノロジーとの向き合い方を見直す

いまのリーダーシップの役割は、単に新しいテクノロジーを導入することにとどまらない。人々が安全に、倫理的に、そして自信を持って試せる環境をつくる必要がある。

私が、ビジネスリーダーが優先すべきだと考える点は以下の通りだ。

1. リーダーの通達ではなく、チームの対話にする

私が学んだことの1つは、人は頑固だから変化に抵抗するのではない、ということだ。抵抗は、その変化が「自分たちに起きている」ものであり、「自分たちと一緒に進む」ものではないと感じたときに生まれる。

したがって、新しいツールを導入して全員が魔法のように受け入れることを期待するのではなく、率直な対話のための余白をまずつくるべきだ。チームに、例えば次のように問う。「本当は何が時間を節約してくれるのか」「何に違和感があるのか」「何を学びたいのか」「誰かにもっと上手に説明してほしいことは何か」。

初期段階から自分が含まれていると感じられると、恐れは下がり、好奇心が上がることが多い。そして自信は、1回きりの研修から生まれるのではない。反復と実践、そして評価されていると感じずに試せる自由から生まれる。

2. 健全な境界線の「空気」をつくる

これは単純だが、多くのリーダーが誤るポイントでもある。リーダーが深夜にメッセージを送れば、人は常に対応可能であることを求められていると感じる。何もかもが緊急なら、持続可能なものは何もない。

バランスとは、常に接続していることと効果的であることは同じではない、とチームに示すことだ。ときにリーダーができる最善のことは、ログオフすることを「普通」にすることである。

3. イノベーションを目的と結びつけ続ける

テクノロジーはミッションを支えるべきだが、しばしばそれを見失わせる。

何か新しいものを採用する前に、リーダーは立ち止まって次を自問すべきだと私は考える。

• これは本当に仕事を良くするのか?

• チームが最高の仕事をする助けになるのか?

• 私たちが支える人々にとっての成果を改善するのか?

というのも、真実はこうだ。ディスラプションは組織を不安定化させる必要はない。むしろ研ぎ澄ますべきである。ただし、それはリーダーが明確さと共感の両方をもって動くときに限られる。

基盤は「人」であることを忘れない

2つの組織の創業者として、ダボスのフォーラムは私にとって個人的な意味を帯びていた。最も心に残ったのは、人への投資が「あると望ましいもの」ではない、という共通認識だ。それは、他のすべてが成り立つための土台である。

STEM人材のエコシステムを築いてきた経験から言えば、人への投資はスローガンではない。基調講演で口にする類いのものでもない。意図してつくり上げるものである。

人々に本物の機会を与えれば──実際に関わるメンター、雑務で終わらないインターンシップ、自信を育てるプロジェクト、成長を促すフィードバック──彼らは急速に伸びていく。

しかし、それは偶然であってはならない。構造化されている必要がある。そうでなければ、心地よい一瞬で終わり、現実のキャリアパスにはならない。

もう1つ、私が何度も目にしてきたのは、近さがどれほど重要かという点だ。学生、キャリア初期の人材、創業者、そして企業が同じ環境にいると、あらゆるものが加速する。

最後の要素は一貫性である。長期的に成功する人の多くは、シンプルなものを持っている。継続的な支援だ。誰かが状況を確認し、誰かが道案内をし、コミュニティが周囲にある。あるいは、市場が本当に必要とするものにつながる実際の機会がある。

より強い会社をつくりたいリーダーは、シンプルに考えるべきだ

私が提案するのは以下である。

• 体裁だけではなく、ポテンシャルを見て採用する

• 組織内に実効性のある学習パスをつくる

• メンタリングや育成を行う人を評価する

• インクルージョンを実務に落とし込む。見せかけにしない

• 特にAIがあらゆるものを再編するなかで、チームが必要とする将来のスキルに集中し続ける

最も強いエコシステムは人材を惹きつけ、そして育てる。投資する。そして、完璧な候補者を待たない。育つように手を貸す。

未来は、いま始まる

ダボスは世界が未来について語る場所だ。しかし、未来がそこで決まるわけではない。

ダボスが本当に行うのは、問いを研ぎ澄ますことだ。真の答えはその後に、日々の意思決定に、リーダーの選択に、そして誰も見ていないときに組織が人を採用し、育て、支えるあり方の中に築かれていく。

本当の試験はアルプスで行われるのではない。翌週の月曜、あなたのチームとともに始まる。

forbes.com 原文

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