フォーブスは米国時間3月10日、「世界長者番付(World’s Billionaires List)」2026年版を発表した。
本稿では、そのうち中国本土出身のビリオネア上位10人をフォーブス「中国のビリオネア トップ10」2026年版として紹介する。フォーブスは、香港と中国本土とは別枠でビリオネアについて集計しており、2026年における中国本土のビリオネア数は539人となった。
中国では人工知能(AI)分野の急速な進展に加え、各業界で続いてきた価格競争を抑制する政府の政策が追い風となり、ビリオネアの資産は過去最高に近い水準まで膨らんでいる。
中国本土出身ビリオネアの総資産は約350兆円
中国の株式市場は、AI分野の進展が投資家の期待を高めた結果、活況を呈している。フォーブス「世界長者番付」2025年版の発表以降、香港ハンセン指数は10%上昇し、上海と深センの取引所に上場する300銘柄で構成されるCSI300指数も約20%上昇した。UBS証券は直近の報告書で、中国本土の株価がイラン戦争によるボラティリティに直面するものの、今後さらに上昇し、「緩やかな強気相場」に入る可能性があると述べている。これは、中国政府が電気自動車(EV)からフードデリバリーに至るまで、過度な競争や価格競争の抑制に乗り出していることに加え、企業収益の改善が見込まれるためだ。
こうした市場の楽観ムードの中、フォーブス「世界長者番付」2026年版に名を連ねた中国のビリオネアの総資産は約2兆2000億ドル(約349.8兆円。1ドル=159円換算)に達した。これは、コロナ禍や民間企業への締め付けによって多くのハイテク企業の時価総額が急減する前の2021年に記録した最高額の2兆5000億ドル(約397.5兆円)に迫る水準だ。ビリオネアの総資産は、2025年の1兆6800億ドル(約267.1兆円)から31%増加し、2年前の1兆3300億ドル(約211.5兆円)からも大きく伸びた。
フォーブス「世界長者番付」2026年版では、中国本土出身のビリオネアは539人となった。2025年版の450人から増え、2024年の406人も上回った。AI関連分野では、いくつかの新たなビリオネアが誕生している。その筆頭に挙げられるのが、「Zhipu」として知られる香港上場のAIモデル開発企業Knowledge Atlas Technology会長の劉徳兵(リウ・デビン)だ。現在50歳の彼の資産は、推定91億ドル(約1.4兆円)で、中国の2026年の新顔のビリオネアの中で最も資産が多い人物となった。中国本土のビリオネア数は、989人のビリオネアを抱える米国に次いで世界で2番目となっている。
本土以外の富豪も含めた「大中華圏」のビリオネア総数は610人
フォーブスは、香港のビリオネアを中国本土とは別枠で集計している。香港と深センに上場する電池大手CATLの創業者ロビン・ゼンの推定保有資産は532億ドル(約8.5兆円)で、アジアの金融ハブである香港で最も裕福な人物となっている。彼の資産は、香港上場企業CKハチソン・ホールディングスとCKアセット・ホールディングスの持ち分を保有する、実業家の李嘉誠(リ・カシン)の470億ドル(約7.5兆円)を上回っている。本土以外の富豪も含めた「大中華圏(グレーター・チャイナ)」のビリオネア総数は610人となり、2025年の516人、2024年の473人から増加した。フォーブス「世界長者番付」2026年版のビリオネアの総数は3428人で、総資産は20兆1000億ドル(約3195.9兆円)に達している。
中国出身のビリオネアのうち、フォーブス「世界長者番付」2026年版では、23人が姿を消した。その中には死去した5人が含まれる。また新たに52人が加わり、過去にランク入りした後に1度外れ、再び復帰した人物も60人にのぼった。
中国政府は、AIやロボティクス、バイオテクノロジーなどの分野を引き続き支援
AI分野では、香港上場のAIモデル企業MiniMax Groupの会長兼CEOである閻俊傑(ヤン・ジュンジエ)も初めてフォーブス「世界長者番付」入りした。彼の資産は72億ドルに達している。同社は、中国政府が自国のテクノロジー競争力の強化を進める中で、OpenAIやエヌビディアに挑もうとする中国の新興企業群の一角を占める。
中国政府は、先日開かれた全国人民代表大会で、AIやロボティクス、バイオテクノロジーなどの分野を引き続き支援する方針を改めて表明した。数十年ぶりの低い成長率に直面する中国経済にとって、これらの分野を新たな成長の原動力に育てたい考えだ。2026年のGDP成長率目標は、1991年以来で最も低い水準の4.5〜5%に設定されている。中国経済は、個人消費の低迷や地政学的な逆風などの課題に直面している。
トップ10人の富豪の総資産は66兆円
中国で最も裕福な10人の富豪の総資産は、4145億ドル(約65.9兆円)に達した。この額は、2025年の4005億ドル(約63.7兆円)から増加し、2024年の3040億ドル(約48.3兆円)も上回っている。バイトダンス創業者の張一鳴(ジャン・イーミン)は、資産693億ドル(約11兆円)で中国一の富豪の座を維持している。1月にはTikTokの所有権をめぐる取引が最終決着し、短編動画プラットフォームの米国事業の支配権が、トランプ大統領が承認した投資家グループに引き渡された。バイトダンスは、TikTokの米国事業を管理するために設立された新たな合弁会社に少数株主として出資する見通しだ。
飲料大手Nongfu Spring(農夫山泉)の会長、鍾睒睒(ジョン・シャンシャン)は、資産681億ドル(約10.8兆円)でこれに続く。3位はテンセントの会長、馬化騰(マー・フアテン)で推定資産は538億ドル(約8.6兆円)とされた。テンセントは、AI搭載のデジタルアシスタントにユーザーを呼び込むため、他のテック大手と激しく競争している。
モルガン・スタンレーの推計によれば、テンセント、アリババ、バイトダンスなどの企業は、2月の春節の連休の1週間の間に合計11億ドル(約1749億円)の補助金を投入。AIチャットボットを使って映画チケットを購入したり食事を注文したりする利用者に対し、割引やクーポンを提供したという。



