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2026.03.13 08:00

イランの実権を握るのはモジタバ師ではない、負傷発表で露呈した「体制の内幕」

イランの首都テヘラン中心部の大通りに面したビルに掲げられた、初代最高指導者ホメイニ師に見守られながら第2代最高指導者の父アリ・ハメネイ師から国旗を受け取るモジタバ・ハメネイ師を描いた巨大壁画。2026年3月10日撮影(Majid Saeedi/Getty Images)

イランの首都テヘラン中心部の大通りに面したビルに掲げられた、初代最高指導者ホメイニ師に見守られながら第2代最高指導者の父アリ・ハメネイ師から国旗を受け取るモジタバ・ハメネイ師を描いた巨大壁画。2026年3月10日撮影(Majid Saeedi/Getty Images)

イラン政府は今週、第3代最高指導者に選出されたモジタバ・ハメネイ師が負傷していることを認めた。米国とイスラエルの当局者がこれに先立ち、軍事作戦を開始した2月28日の空爆でモジタバ師が負傷したと主張していた。モジタバ師の父で第2代最高指導者だったアリ・ハメネイ師はこの空爆で死亡。3月8日、後継にモジタバ師が選出された。

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この発表が重要な理由は、モジタバ師の健康状態そのものよりも、その権威の程が明らかになった点にある。イスラム革命防衛隊(IRGC)が戦時の非常事態下で担ぎ上げた負傷中の指導者は、イラン憲法に則った手続きを経て選出される最高指導者と同列の存在ではない。この差異がイランの今後を定義することになる。

筆者はハメネイ師が殺害された空爆当日に、後継者選びのシナリオを4つ挙げた。そのうち最も可能性が高いとみたシナリオ、すなわち革命防衛隊が「従順な名目上の指導者」を立てて権力固めに動く、という流れが今、リアルタイムで進行中だ。モジタバ師の昇格は、イスラム法学に基づいた選択ではない。聖職者の衣をかぶった軍事的な既成事実である。

20年におよぶ影の工作も、なお不十分

モジタバ・ハメネイはこの瞬間のために、20年もの歳月をかけて準備してきた。父親の執務室(最高指導者室)内に並行権力構造を構築し、最高指導者と直に接触するルートを掌握。革命防衛隊の司令官らとも、イラン・イラク戦争時に10代でハビブ大隊に志願・従軍したときから深い絆を育んできた。こうして政治的・宗教的・血筋的にライバルとなる存在を体系的に排除したのである。

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このやり方は教訓に満ちている。1998年にイラン国内で相次いだ体制に批判的な知識人の連続殺害事件について当時のモハマド・ハタミ大統領ら改革派が調査したところ、手がかりに導かれて辿り着いた先はモジタバ師のネットワークにつながる諜報工作員だった。

2009年のイラン大統領選の結果をめぐって不正疑惑が持ち上がり、「緑の運動」と呼ばれる全国規模の抗議デモが起こった際、これを鎮圧した革命防衛隊傘下の民兵組織「バシジ」の弾圧を取り仕切ったのはモジタバ師だとされる。改革派の大統領候補だったメフディ・カルビはモジタバ師をマフムード・アフマディネジャド政権樹立の黒幕と名指しし、公然と非難した。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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