普通なら、ただの空想で終わる。しかし皇帝は違った。実際に試してみることにしたのだ。
彼は何千枚ものバラの花びらを集めさせた。そして宴会に招いた客人たちの上に、天井から一気に落下させた。美しい花びらの雨。最初、客たちは喜んだかもしれない。
しかし、花びらは止まらない。膝まで、腰まで、胸まで、そして顔まで。逃げ場はない。扉は閉ざされている。やがて客人たちは、美しい花びらの海に溺れて窒息死した。
そんな残酷な死の花びらが作り出す光景を穏やかな表情で眺めるのが、花びらの背後で横たわっているヘリオガバルスだ。
彼の側には談笑する、ヘリオガバルスの真の客人たちがいる。
そこには、罪の意識は微塵も感じられない。
これはそんな美しくも冷たい死をもたらす場面を描いた絵画なのだ。
権力の濫用には必ず報いがある
なぜ皇帝はこんなことをしたのか?
それは、彼が「人間を超越した存在」だと示すためだった。
生死を玩具のように扱える神のごとき存在。
美しいものでさえ凶器に変えられる絶対的権力者。
しかし、権力の濫用には必ず報いがある。ヘリオガバルスは18歳になる前に近衛兵に暗殺された。遺体は見世物にされ、テヴェレ川に投げ捨てられた。
画家アルマ=タデマは、この作品のために執念を燃やした。
冬の間も毎週新鮮なバラを取り寄せ、何ヶ月もかけて1枚1枚花びらを描いた。完成時、彼のアトリエは本物のバラの花びらで埋め尽くされていたという。
まるでヘリオガバルスの宴会を再現するかのように。
芸術家もまた、作品のためなら常人には理解できないことをする。画家自身が、この狂気の皇帝と重なって見える。そんな皮肉な作品なのだ。
【Summary】
バラの花びらだけで人殺しを企てた、愚かな権力者の姿が描かれている。



