「MENASA地域」というフロンティア
アート・バーゼル・カタールに参加したのは87のギャラリー。3月の香港の約240、6月のバーゼルの約290と比べると、出展数は大きく絞り込まれていた。
また、展示された84人のアーティストの半数以上がMENASA(中東・北アフリカ・南アジア)地域出身の作家で、これまで欧米やアジアを中心に展開してきたアートフェアの重心が、MENASA地域へと広がる象徴的な出来事として見ることができる。
さらに本フェアは、従来のブース形式を採用せず、1ギャラリー=1アーティストの個展形式で構成された。芸術監督を務めたのは、エジプト人アーティストのワエル・シャウキー。カタール博物館傘下の現代美術施設「ファイヤーステーション」のディレクターも務める彼によるキュレーションを重視した構成は、来場者が作品と向き合う時間を確保し、フェアを「鑑賞の場」として再定義する試みでもあった。
選び抜かれた国際ギャラリーの布陣
MENASA地域にルーツを持つギャラリーが多数参加する一方で、ガゴシアン、ペース、ハウザー&ワース、デイヴィッド・ツヴィルナーなど、アート・バーゼル常連のメガギャラリーやブルーチップ・ギャラリーも名を連ねた。
中東、欧米、アジアのギャラリーが横断的に参加した構成は、このフェアが地域限定のイベントではなく、国際市場の新たな接点として設計されていることを示している。
公式リリースでは「カタール、サウジアラビア、UAE、ヨーロッパからの新しいコレクターや機関との有意義な関わりが、幅広い価格帯での売上につながった」と報告されたが、実際の販売状況についてもアート専門メディアが相次いで伝えている。
ニューヨークを拠点とするアート市場情報プラットフォームArtnetは、サウジアラビアのアサーギャラリーが同国を代表するアーティスト、アーメド・マーターの作品9点を4万5000ドル〜22万ドルで販売したと報じた。ペロタンは、イラン生まれのアメリカ人アーティスト、アリ・バニサドルの絵画や彫刻を展示し、「多数の販売問い合わせ」があったという。
また、ARTnewsによれば、ロサンゼルスのデイヴィッド・コルダンスキー・ギャラリーは、アメリカのアーティスト、ルーシー・ブルの絵画3点を37万5000ドル〜45万ドルで完売。そのうち2点は中東の著名コレクションや美術館に収蔵された。
ホワイトキューブは、ゲオルク・バゼリッツの彫刻を80万ユーロ、絵画を65万〜110万ユーロで取引したと報じられている。初開催のフェアとしては堅調な取引が確認され、MENASA地域が新たな市場として国際ギャラリーに認識され始めていることが示された。


