イラン攻撃による原油価格の上昇は、すべての消費者の家計を直撃しないとしても、食料品価格の上昇という形で現れる。中東情勢の動向は、燃料・肥料・包装材という3つのコストを押し上げているからだ。これらは普段あまり意識されないが、果物から缶詰のスープに至るまで、モノの値段を左右する重要な要素となっている。
中東情勢を受けた世界の原油市場の動きは、食品価格にも直結する問題
米国時間3月第2週の時点で、世界の原油市場は、中東情勢を受けてすでに動き始めている。ロンドン市場の指標であるブレント原油は1バレル100ドル前後、米国のWTI先物も99ドル近辺まで上昇し、値を上げている。世界の石油の約2割が通過するホルムズ海峡では、イランの警告を受け、海運各社がリスクの再評価を進めている。タンカーの航路変更も相次いでいる。
世界経済フォーラムのアナリストによれば、ホルムズ海峡の輸送が長期にわたって制約されれば、市場から1日あたり800万〜1000万バレルの供給が失われる可能性がある。状況が悪化した場合、原油価格は1バレルあたり約20ドル押し上げられる恐れがあるという。過去の傾向を見ると、原油価格が1ドル動くごとにガソリン価格は0.02〜0.03ドル変動してきた。現在の混乱だけでも、米国のガソリン小売価格は短期的に1ガロンあたり0.10ドル以上上昇する可能性がある。これは食品価格にも直結する問題だ。青果を積んだトラックも、肉を運ぶ冷蔵トレーラーも、飲料のパレットも、すべてディーゼルやガソリンで動くからだ。
エネルギーコストは、農作物の肥料・食品加工の電力・商品の包装などに組み込まれる
エネルギーコストは農業資材や包装にも組み込まれている。原油や天然ガスの価格が上昇すると、窒素肥料や農薬、農作物の灌漑や食品加工に必要な電力のコストも上がる。カタールやサウジアラビアなど中東諸国は、米国の農業事業者が使用する肥料の主要成分である尿素、窒素、リン酸の重要な供給源だ。すでに鉄鋼とアルミニウムへの関税によって、缶や一部のボトル材料の価格は上昇していた。そこに原油高が加わり、石油化学製品から作られるプラスチック包装やフィルムにも追加のコスト圧力がかかっている。
その結果、缶詰の野菜やスープ、飲料といった棚陳列商品の包装コストが上昇し、輸送に用いる燃料価格の高騰も果物やレタスなどの青果や冷蔵ケースの製品など、生鮮食品の価格を押し上げる要因となっている。
ぜいたくな食事を楽しむ人々にとっても、悪いニュースがある。イラン攻撃の影響でキャビアの供給網が大きく混乱している。ペルシャ湾では貨物船の遅延が発生し、航空貨物も停止しているため、高級なイラン産キャビアの供給量が減少し、価格が大きく上昇している。米国で消費されるキャビアのうちイランから輸入されているのは1%未満にすぎないが、世界的な供給不足は、キャビア全体の価格を押し上げる可能性がある。なお、米国で消費されるキャビアの約60%は中国から輸入されている。
原油価格の急騰は、すでにコストを増大させていた通商政策の上に重なる
原油価格の急騰は、すでに食品市場にコストの増大をもたらしていた通商政策の上に重なっている。
2月24日、トランプ政権は、巨額で重大な国際収支の赤字に対処するための通商法122条に基づき、一律10%の輸入関税を150日間の期限付きで導入した。この措置は、関税に関する非常権限の使用を制限する裁判所の判断を受けた後に打ち出されたものだ。しかし小売企業や消費財企業にとっての実質的な影響は明白だ。輸入される原材料、完成食品、設備機器のほぼすべてが、新たな課税の対象になった。
関税引き上げで輸入品のコストが上昇、スーパーやレストランの価格上昇を招く
米商工会議所は、これまでの食品や農産物への関税引き上げによって、輸入品のコストがすでに上昇し、スーパーやレストランの価格上昇を招いていると警告している。ある分析では、2025年の4カ月間で食品・農業関連の関税収入が2024年と比べて647%増加したと試算された。最終的にその負担を背負うのは消費者だ。シンクタンクのセンター・フォー・アメリカン・プログレスの最近の報告によれば、関税が存在しない場合と比べ、米国の消費者がコーヒー、茶、ココア、魚介類、果物、肉類などに支払う費用は、最大12%増加した。
今回導入された10%の一律関税は、すでに課された鉄鋼、アルミニウム、設備機器、さまざまな製造品への関税に上乗せされる形になる。これらの措置はすでに缶やボトル、機械設備のコストを押し上げていた。そこにイラン攻撃による原油価格の上昇が重なり、石油化学製品から作られるプラスチック包装のコストも一段と高まっている。



