経済・社会

2026.03.16 16:00

原油価格と関税の「複合ショック」、米国のスーパーとレストランを襲う食料高騰

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食料品のコスト高は、レストランにより深刻な打撃を与えている

スーパーマーケットを圧迫しているのと同じコスト高は、レストランにより大きな打撃を与えている。レストランはそれを吸収する余地が小さいからだ。スーパーは、プライベートブランドの製品に消費者を誘導したり、販促を実施したり、棚の構成を見直したりすることで利益率を調整できる。しかし、レストランにはこうした逃げ道がほとんどない。価格は簡単には変えられず、人件費も固定的だ。値上げで負担を感じた客には「家で食べる」という単純な選択肢がある。ジェームズ・ビアード財団の2026年業界レポートによれば、2025年に価格を10%以上引き上げたレストランは、「利益と売上の両方が落ち込んだ」と報告する割合が最も高かった。

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中東情勢と関税政策の影響を強く受けるレストランの食材は、スーパーと同様に、魚介類、青果、食用油、コーヒーだ。しかもこれらはメニューの中心となる食材でもある。輸入魚に依存した看板料理を持つ高級レストランや、熱帯産の食材を使うファストカジュアルのチェーンは、スーパーの仕入れ担当者と同じ供給の混乱に直面することになる。ただし、購買力は小さく、代替食材に素早く切り替える余地も限られている。米国のレストランの大半を占める個人経営の店舗は、通常、在庫を数日分しか抱えておらず、大手チェーンのように価格変動に備えるヘッジ手段や長期契約も持っていない。

原油ショックと関税が同時に到来、レストラン経営者にとって影響は大きい

レストラン経営者にとって、原油ショックと関税が同時に到来することの複合的な影響は大きい。春のメニューの刷新は、価格改定を伴うものになる可能性がある。全米レストラン協会はすでに、外食価格のインフレを2026年の主要な懸念の1つとして挙げている。しかもこの新たなコスト上昇は、外食インフレがまだ十分に落ち着いていない段階で起きている。過去のインフレ局面でレストランからスーパーへと消費を切り替えた消費者は、今回も同じ行動を取る可能性がある。

食品展示会において繰り返し尋ねられたテーマは、政治リスク

筆者は2026年1月、ドバイで開催された食品展示会「ガルフード」で基調講演を行った。そこで耳にするだろうと思っていたのは、新しいフレーバーや商品形態、ウェルネス関連のトレンドについての話だった。しかし実際には、UAEや周辺地域の食品メーカーやブランドオーナーから繰り返し尋ねられたテーマは政治リスクだった。特に、現在の環境で米国とビジネスをするリスクについてだ。

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多くの経営者は、成功するという点では米国市場は必ずしも必要ではないと明かす

多くの経営者は、成功するという点では、現在の米国市場は必ずしも必要ではないと率直に明かした。彼らはアジア、アフリカ、湾岸協力会議(GCC)域内に強い成長機会を見ている。これらの地域では、通商ルールや取引関係がより予測しやすく、ある朝目覚めたらSNSの投稿や新たな大統領令によって輸入コストが突然10%以上増えている、という事態を心配する必要もない。世界的な関税の拡大、頻繁に変わる制裁措置、読みづらい外交シグナル──こうした状況を踏まえれば、彼らの結論は単純だ。政策が一夜で変わり得る相手に、ビジネスを賭ける必要はあるのかということだ。率直に言えば、こうした議論から私が感じたのは、これらの企業や家族経営の事業者が、作物の栽培から消費者トレンドまで含めて、食品ビジネスをはるかに長い時間軸で見ているという点だった。

これは、米国の小売企業がこれまで慣れ親しんできた物語とは異なる。世界のブランドは、事業拡大には米国の消費者市場へのアクセスを必要としていると長年考えられてきた。しかしドバイでは、特に植物由来食品、ハラール食品、健康志向の商品分野で、新興企業から既存企業まで、多くのプレーヤーがより政策が安定し、関税の変動も小さい市場を優先し始めていた。こうした姿勢は、食品業界に関わる人々にとって警戒すべき兆候といえる。

米国人にとって、ワシントンやホルムズ海峡で下された決定のコストを最も実感する場所

米国の消費者が、スーパーやレストランのレシートに「イラン攻撃サーチャージ」といった項目を見ることはないだろう。だが実際には、コーヒーの価格が少し上がり、果物が手に入りにくくなり、缶詰のスープの値段がいつの間にか30セント上がっている──そんな形で影響は現れる。こうした値上がりは突然起きたように見えるかもしれない。

その背後では、中東情勢の激化、広範な新関税、そして米国市場を本当に必要としているのかを見直し始めている世界のサプライヤーの動きが重なり合っている。

もちろん、こうした事態が必ずしも避けられないわけではない。だが状況を逆転させるには、これまで欠けていた政策の一貫性が必要になる。多くの米国人にとって、ワシントンやホルムズ海峡で下された決定のコストを最も実感する場所は、スーパーの食品売り場になるかもしれない。その影響は、買い物カートを押す日常の中で少しずつ実感されることになる。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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