政治

2026.05.14 16:15

クラファンで発表予定「日本財政破綻」の未来恐怖小説。米政治外交の専門家が読んだ

WOWWOWで映像化され話題を呼んだ『オペレーションZ』(新潮社刊)

どう脱する極限状態? かの「ディストピアへの最先端」国家を日本は追うか:三牧聖子

国家財政が破綻し、すべての公共サービスは停止。富裕層と若者は次々と日本を脱出し、脱出できなかった人々は緩慢死を迎える─『デフォルトピア』が描くのは地獄のような未来図だ。なんとしてもこの地獄だけは防がねばならない。当然読者はそう考えるだろう。

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しかし今の世界を見れば、財政破綻を防ぐための徹底した歳出カットの試みが、別のディストピアを生み出しつつある。最先端を行くのがアメリカだ。

2025年に発足したドナルド・トランプ政権は「米国第一」をスローガンに、むき出しの国益を追求し、高関税政策で同盟国を痛めつけることもためらわない。米国の変化は対外行動だけではない。国内には「弱者切り捨て」の雰囲気が広がり、福祉国家の解体が劇的に進む。

米国の国家債務は38兆ドル(約5940兆円)を超え、歴史的な高水準にある。「大胆な歳出削減がなければ米国は破綻する」─2025年1月に発足した第二次トランプ政権はこの大号令のもと、政府効率化省(DOGE)を設立し、大々的な歳出カットを図ってきた。DOGEトップに就任したのは、電気自動車のテスラや宇宙事業スペースXのCEOであり、人類初のトリリオネアとなった実業家イーロン・マスク。2024年大統領選でトランプ陣営に巨額献金をした見返りとして、民間人でありながら絶大な政治権力を得た。

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マスク率いるDOGEが敵視したのが、救済を必要とする弱者、そして官僚組織だった。マスクは、弱者は共感を利用して、強者に取り入り、不当にその財を奪おうとすると決めつけ、「共感は敵だ」と豪語してきた。さらにマスクによれば、官僚組織こそ、国民の税金を使って不当に弱者に優遇する黒幕であり、相当程度それは解体されねばならないのだった。こうした考えに基づき、DOGEはまず、数十年にわたりアメリカの人道支援を中核的に担ってきた米国開発庁(USAID)を解体した。国内でも貧困層の暮らしを支えてきた食糧支援や医療保険補助は大々的に削減された。これらすべてが「財政破綻を防ぐ」という大義で正当化されたが、効果は薄く、トランプ政権1年でむしろ財政赤字は拡大した。一体誰のための、何のための歳出カットだったのか。この歳出カットによって奪われた命は戻ってこない。

そんなアメリカの混乱状況を知ってか知らずか、日本にも日本版DOGE(租税特別措置・補助金見直し担当室)が内閣官房に設置された。片山さつき財務相が主導し、高額な補助金や税制優遇の点検を行い、2027年度予算への反映を目指すという。弱者の命や生活を犠牲にすることなく「デフォルトピア」を防ぐことはできるのか。

極限状態の日本にあって、「国家を支える公僕」として祖国を捨てない選択をした主人公。彼がこの難題にどう立ち向かうのか。未来への期待を込めて読み進めたい。


三牧聖子(みまき・せいこ)◎同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。専門はアメリカ政治外交・国際関係。

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