トランプはイランに何を望むのか
だが、トランプのイランでの狙いは、ベネズエラで目指した以上に本質的に見える。従順な政権の樹立だけでなく、通常兵器に加えて非通常兵器(核兵器や生物化学兵器など)も有するイランの軍事力を壊滅させようとしている節がある。
イランはドローン生産能力の高さで知られ、2022~24年だけで8000機以上をロシアに輸出した。航続距離4000km以上を誇るドローン「シャヘド149」の生産量は数万機に上る。米国とイスラエルによる攻撃開始から6日間でイランは2000機を超える低コストドローンを中東各地の目標へ向けて発射したが、それらの迎撃は高くつく。ドローンの生産コストが約2万ドル(約320万円)なのに対し、迎撃ミサイルは1発あたり約400万ドル(約6億3100万円)もするのだ。しかも、ドローンは低高度を飛行するため、ミサイルを念頭に開発されたレーダーや早期警戒システムには検出されにくい。
イランのミサイル計画に関しては、弾道ミサイルの保有数で中東最大級を誇り、その速度はドローンや巡航ミサイルをはるかに上回る。最長射程ミサイルは約2000キロ先の目標を攻撃可能で、中東全域と欧州の一部までを射程に収める。イランは既にミサイル500発以上を発射したと伝えられるが、戦争開始時点で中距離弾道ミサイル約2000発、短距離弾道ミサイル6000~8000発を保有していたとされる。
核計画をめぐっては、イランの核施設1カ所が一部損傷を受けたと報じられているが、核施設全体に大きな被害は確認されていない。イランは核兵器を保有してはいないものの、国内十数カ所で核関連活動を継続しており、数カ月で核兵器を製造可能な状態だと専門家は指摘している。
最近のSNS投稿を見る限り、トランプはイランが核計画の放棄を約束するだけでは満足しないだろう。イランは2003年、制裁の解除と完全な国交正常化と引き換えに核開発計画の放棄を提案したが、当時のジョージ・W・ブッシュ政権はこれを拒否した。
マルコ・ルビオ米国務長官によれば、米国のもうひとつの目標はイラン海軍の駆逐だ。ピート・ヘグセス米国防長官は、米国の攻撃でイラン最大の軍艦を含む20隻以上の海軍艦艇に損害を与えたと主張した。イラン海軍とイスラム革命防衛隊海軍は海兵隊員7600人を含む3万8000人の兵力を誇り、開戦段階で潜水艦18隻と哨戒艦・沿岸戦闘艦200隻以上を保有していた。
報道によるとイスラエルのネタニヤフ首相は、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマス(イスラム抵抗運動)、イエメンの武装組織フーシ派、カタイブ・ヒズボラ(神の党旅団)をはじめとするイラクの民兵組織など、イランの代理勢力の一掃を目指している。このうちヒズボラは2日、ハメネイ師殺害を受けてイスラエルをミサイルとドローンで攻撃。イスラエルはレバノン南部と首都ベイルート南郊のヒズボラ支配地域への空爆で応戦し、現在両者は交戦中だ。


