どの職場にも、決して完全には満足しない人がいる。
プロジェクトはうまくいっているがもっと良くできるはずだ、昇進は実現したがタイミングが悪かった、戦略は堅実だが経営陣はもっと早く気づくべきだったーー。
最初はこのような批評は高い基準の表れのように聞こえるかもしれない。野心や原動力のようにも見える。しかし、時が経つにつれて、それは違って感じられるようになる。
慢性的な不満には独特の雰囲気がある。それは成果を向上させることよりも、むしろ不満という底流を持続させ続けることに重点が置かれている。そして、それは熱意よりもはるかに速く広がる。
高い基準と慢性的な不満の違い
高い基準は仕事そのものに焦点を当てるが、慢性的な不満は不足している部分に焦点を当てる。高い基準を持つ人は特定の判断を批評し、代替案を提示する。そうした人の不満には方向性があり、向かうべき方向を示している。
対照的に、慢性的な不満は拡散的だ。問題点は常に変わる。1つの懸念が解決されると、別の懸念が出てくる。状況が改善しても、感情の温度は変わらない。
心理学者はこのパターンを快楽順応と呼ぶ。人はポジティブな変化にすぐ慣れ、元の感情レベルに戻ってしまう。しかし、人によっては、その基準レベルがネガティブに傾くことがある。成功はすぐに影響力を失い、欠点だけが鮮明に残る。
チーム環境ではこれがバランスの歪みを生む。進歩は短い間しか続かず、不満はいつまでも消えない。
不満が伝染する理由
感情は社会で共有されるものだ。人は周囲の人のトーンや情動を無意識に模倣することが感情の伝染に関する研究で示されている。常に不満を抱えている従業員は意図せずチームの感情的な雰囲気を変えてしまうことがある。
否定的な感情は重みを持つ。人間の脳は中立的あるいはポジティブな信号よりも潜在的な脅威に注意を向けるようにできている。このネガティビティ・バイアスによって、称賛よりも不満の方が緊急性があると感じられる。
その結果、1人の慢性的な不満が会話を支配することがある。ミーティングではうまくいっていることよりも欠けていることを中心に議論が展開され始める。エネルギーは構築から防御へと移っていく。
モチベーションを高めるにはそれを強化するものが必要だが、不満は何のインプットがなくても持続するのだ。
決して満足しないことの隠れたメリット
慢性的な不満は必ずしも偶然に生じるわけではない。そこには心理的な役割があることもある。
慢性的な不満はアイデンティティを守る。全てが不十分だと感じているのであれば、その人は共有された成果に完全にコミットすることはない。距離を保ち続け、成果の維持に伴う脆弱性を避ける。
また、慢性的な不満は見識を示す。批判的であることは思慮深いことと誤解されることがある。ある環境では懐疑的であることが知性と同一視される。
危険なのは、批評が戦略ではなく習慣になってしまうことだ。やがて同僚はそうした人の抵抗を予期するようになる。アイデアが十分に検討される前に勢いが失われる。



