カイロス開発の難易度
カイロスの開発には、超小型ロケットならではの難しさがある。超小型ロケットとは、衛星などの搭載物を打ち上げる能力(ペイロード能力)が200kg以下のものを指すことが多い。
カイロスは全長約18m、直径(本体部)1.35m、全備重量約23トンの4段式ロケットであり、高度500kmの太陽同期軌道(SSO)に150kgのペイロード(荷物)を輸送する能力を持つ。太陽同期軌道とは、地球を南北方向に周回する軌道であり、この軌道に投入された衛星は、一定期間ごとに同じ地表上空を通過する。そのため地球観測衛星などに適した軌道とされる。
カイロスの1段から3段には固体燃料ロケットが採用されている。固体燃料の場合、構造が複雑なエンジンを必要とせず、液体の推進剤と違って常温で管理でき、点火するだけで推進力を発生する。そのため地上施設の簡略化、即時的な打ち上げ、コスト低減などが可能となり、超小型ロケットの主要ブースターに採用されるケースが多い。
ただし、その製造には非常に高い技術が必要とされる。打ち上げ花火のような構造を持つ固体燃料ロケットは、ドロドロとした固体燃料をロケット本体に流し込み、消しゴムほどの弾力を持つ固体に硬化させて製造する。ただし、火薬燃料を機体に詰める際、内部にわずかな気泡があれば、燃焼面積が急増して異常燃焼を起こして爆発する。つまり品質のバラつきを抑えるのが難しい。
また、固体燃料ロケットの場合、いったん点火したら燃焼が止められず、液体燃料エンジンのように推力の微調整ができないという制約を持つ。とくにカイロスのような超小型ロケットの場合は燃料量が少ないため、燃焼時間のわずかな誤差が軌道誤差に直結しがちだ。これを抑えるには高い航法技術が必要となるが、その一環としてカイロスでは4段目(最上段)に液体燃料ロケットを搭載。これによって衛星の緻密な軌道投入や、柔軟な運用性を実現しようとしている。
燃焼を止められないという特性は、開発時においても制約をもたらし、地上での燃焼テストでフル燃焼させる必要がある。その結果、製造コストは抑えられる一方で、開発コストが高くなる。そのため固体燃料ロケットの開発においては地上テストが限定されるケースが多く、実際の飛行データから学ぶ傾向が強くなる。
この点から考えても、カイロスの開発においては飛行テストを重ね、得られたデータを次回にフィードバックして製品精度を上げていくことが、もっとも健全かつ合理的な開発手順といえる。スペースワンの豊田正和社長は会見において、今回の打ち上げで同社は「経験を積んだ」とし、「失敗とは考えてはいない」と述べられたが、これは今回の打ち上げが成功への途上にあり、必要な工程であったとの認識を示唆している。


