食&酒

2026.03.07 14:15

性別より実力 フランス「人間国宝」シェフの幸福観

ヴィルジニー・バセロシェフ。後ろにあるのは、フランス人アーティスト、ニキ・ド・サンファルによる女性をテーマにしたオブジェ。

ヴィルジニー・バセロシェフ。後ろにあるのは、フランス人アーティスト、ニキ・ド・サンファルによる女性をテーマにしたオブジェ。

温暖な気候で、18世紀から貴族の冬のリゾート地として親しまれてきた南仏・ニース。紺碧の海を望む海岸沿いの遊歩道「プロムナード・デ・ザングレ」沿いに、ドーム型の屋根を持つ優雅な建物がある。「ル・ネグレスコ」だ。

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実はこのホテルは、自立した女性と縁が深い。3月8日の「国際女性デー」にあわせ、ホテルで総料理長をつとめる女性シェフ、ヴィルジニー・バセロを紹介したい。

ル・ネグレスコは、初代オーナーのアンリ・ネグレスコが、建築家エドゥアール・ニエルマンに依頼して、1913年に開業した。その後二度の大戦の余波を受けて所有権が点々としたが、女性オーナー、故ジャンヌ・オジェ氏が中興の祖に。1957年に彼女の父が購入してから約70年、このホテルを守ってきた。

2019年に亡くなった際に後継ぎがいなかったため、現在の経営は彼女がつくった財団に委ねられている。彼女が暮らした6階は海を望むジャグジーも魅力の開放感あふれるスイートに改装され、宿泊することも可能だ。その下は階によってデザインが異なり、長年かけて集めた約6000点ものアートが、それぞれの階ごとに「帝政ナポレオン時代のアンピール様式」「モダンアート」というように、テーマを決めて展示されている。

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ジャンヌ・オジェ氏のポートレート
ジャンヌ・オジェ氏のポートレート

ホテル全体のスタッフの男女比は半々で、ジェンダー平等にも力が入る。そこで一際輝きを放つのが、女性料理人として史上2人目のM.O.F.(フランス版人間国宝)を受章したヴィルジニー・バセロシェフだ。

バセロシェフはノルマンディ地方出身で、父がレストランを営んでいたことから料理に興味を持ち、パラスホテルである「ル・ブリストル」のメインダイニング「エピキュール」のエリック・フレション氏のスーシェフを務め、2003年のミシュラン一つ星昇格に貢献。2012年からは「サン・ジェームス」のヘッドシェフに就任し、2015年にM.O.F.に。

2019年から「ル・ネグレスコ」のエグゼクティブシェフとなり、現在はミシュラン一つ星のメインダイニング「ル・シャンテクレール(フランスの国鳥でもある雄鶏の意味)」で、美食の体験を生み出している。「常に挑戦することを辞めない」彼女の原動力を聞いた。

──料理の道に入ったきっかけはお父様だったとか。

実は、子どもの頃、最初は軍隊に入りたかったのです。故郷は第二次世界大戦時に英米軍が上陸した「ノルマンディー作戦」で知られる土地。パレードで軍隊を見て、かっこいいと憧れたのがきっかけです。でも「女性は軍隊に入れない」と言われて、父のような料理人になろうと思うようになりました。

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文・写真=仲山今日子

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