──当時の厨房は今よりももっと厳しく、いわば「軍隊的な」場所だったと思います。差別されたり、大変だったことはありませんでしたか?
女性だからといって、差別を受けたと感じたことはありません。確かにきつい仕事ですが、父の姿を見て、大変だということはわかっていましたし、それは性別には関係ないと思います。結局は自分の心の持ちようです。自分の意識を「女性だから差別されていないか」というふうに向けるから、それが気になるのです。集中すべきことに集中すれば良いだけです。
──そこからM.O.F.に挑戦したのはどうしてですか?
もともと何か目的を立てて挑戦することが好きなのです。女性のM.O.F.がほとんどいないのはどうしてだろう? と思って、挑戦しようと思いました。
──なぜ、女性のM.O.F.シェフが少ないのでしょうか?
女性には、地位を上げてシェフになったり、何かのコンクールに挑戦することのプライオリティが高くない人が多くないのかも知れません。でも、幸せの形は人それぞれ。皆が挑戦すべきとは思いません。
──目的を達成するために大切にしていることは何ですか?
ハードワークの一言に尽きます。
──ル・シャンテクレールは、「コピーするな、創造しろ」の言葉で知られるジャック・マキシマンシェフが初代料理長です。その店で、ご自身のオリジナリティは?
私は地中海のテロワールや季節感を反映させた料理を作っています。例えば、帆立貝に今が季節のミモザの花をベニエにしたものをかけて季節の香りを添えたり、チョコレートのデザートに、南仏らしいオレンジの花を漬け込んだオリーブオイルをかけて仕上げたりしています。
──どちらも南仏らしい香り使いですね。前菜に、郷土料理をミニチュアにして出しているのも、地方性の表現の一つですね。
はい。また、それだけではなく、サービスや音楽など、総合的な表現としての食体験を考えています。例えば、それぞれのコースごとに料理人がテーブルサイドでのサービスをしたり、ピアニストにライブ演奏をしてもらったり。正面に飾られている花も、M.O.F.を受章したエルベ・フレザルというフラワーアーティストのもので、季節ごとにデザインを変えてもらっています。
オーナーの故ジャンヌさんも、アーティストのイヴァラルにカーペットを特注したりしていましたから、美食をこうした総合的なアートの表現とすることは、アートホテルでもある「ル・ネグレスコ」のメインダイニングとしてふさわしいと思っています。
──今後の夢は?
チームでミシュラン二つ星を取ることです。私のスーシェフは2人いるのですが、両方とも女性なのです。そのうちのひとり、ミシェル・ギボンが3月にM.O.F.に初挑戦し、2週間後に筆記試験を迎えます。性別にこだわらず、実力があれば登用しますし、彼女たちのチャレンジも全力で応援します。これからもフランス料理の技術を伝承する人を生み出していきたいですね。


