リーダーシップ

2026.03.05 17:26

変化の時代、リーダーに必要なのは「レジリエンス」ではなく「適応力」だ

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筆者はこのほど、モントリオールに拠点を置くエゴンゼンダーのリーダーシップコンサルタント、マイク・ジェームズ・ロス氏と向き合い、彼が「レジリエンスの終焉」と呼ぶテーマについて議論した。

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大胆な主張だ。というのも、レジリエンスが不可欠なリーダーの資質だという議論は、これまで膨大に行われてきた。取締役会はそれを称賛し、人事部門は研修の対象にし、CEOは決算説明の場で言及する。だがロス氏は、レジリエンスに焦点を当て続けることが時代遅れであるだけでなく、実際には前進を妨げているのだと説得力ある論を展開する。

ロス氏は、金融弁護士、プライベートエクイティ投資家、スタートアップ創業者、マッキンゼーのコンサルタント、ラ・メゾン・シモンズの上級幹部としてのキャリアを経て、エゴンゼンダーに加わった。「リーダーを発掘し、育成し、変革する」ことを使命とする同社で、ロス氏は個人コーチングに加え、カナダおよび世界の有力企業におけるシニアリーダーのチーム支援を専門としている。

彼の主張は、新たなデータにも支えられている。エゴンゼンダーが直近で実施した「CEOレスポンス」調査では、1200人以上のグローバルCEOに対し、CEOとして、自分自身と自社チームに前例のないレベルの適応力を培う必要があるという命題に同意するかを尋ねた。結果は、92%が「同意」だった。

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「『いや、その必要はない』と言っている8%が誰なのか、私にはわかりません」とロス氏は笑う。

しかしリーダーにとっての見出しは「92%が同意」ではない。彼らが何を認めているかだ。適応力はもはや競争優位ではない。最低限の参加資格となったのだ。しかも、従来の延長線上の小さな適応ではなく、これまで想像したこともない水準を超える適応力が求められている。

なぜレジリエンスではもう通用しないのか

ロス氏は、レジリエンスが有用性を失った理由について歯に衣着せぬ物言いをする。

「レジリエンスが成功の鍵だと信じている人は?」。このテーマで講演する際、彼は聴衆にそう問いかける。「みんなが手を挙げる。そこで私は言います。『その通り。ただし10年古い』と」

レジリエンスは定義上、混乱や中断の後に「以前の状態へ戻る」ことを意味する。だがいまの環境では、戻るべき「以前の状態」そのものがもはや存在しない、と彼は言う。

彼の比喩は鮮烈だ。「海辺にいて波が来るのを想像してほしい。身をかがめて耐える。波が通り過ぎ、立ち上がって『自分はレジリエントだ』と思う。しかし、そのすぐ後ろにもう1つ波が来ている。そして問題は、波がかつてないほど大きく、かつ、かつてないほど速い間隔で押し寄せてくることだ。変化の猛攻に耐え抜くことが目標なら、最終的に失敗する」とロス氏は語る。

続けて彼は言う。「もっと面白いアプローチは、サーフボードをつかんで波に飛び込むことだ。それが適応力である。変化に耐えることではない。変化のなかで繁栄し、そこから積み上げ、追い風にする——波を使って自分の目的を前に進めることだ」

「変化」がビジネス目的になるとき

アマゾンは、一部の企業がいかに自社のアイデンティティを再定義しているかを示す例である。

アマゾンCEOのアンディ・ジャシー氏は、2025年の株主宛書簡で、同社が「世界最大のスタートアップ」のように機能しなければならないと強調した。官僚的な手続きを削ぎ落とし、意思決定を加速させ、規模を保ちながらスピードを守るためである。彼は従業員に対し、社内の不必要な手続きや規則を指摘するよう促し、実験と絶え間ない自己刷新を重視する同社の長年の「Day 1」哲学を改めて強調した。

この動きは、変化が突発的な出来事ではなく、ビジネスの進め方そのものに埋め込まれているという戦略姿勢を映し出す。アマゾンは単にディスラプションに対応しているのではない。ディスラプションを前提に組織を組み立てているのである。

採用で「適応力」を見抜く

適応力がいまやリーダーシップの通貨であるなら、採用慣行も進化する必要がある。

では、適応力の高い人材をどう見極めるべきか。ロス氏は複数の提案を行うなかで、「転職が多い」履歴書に対する従来の見方に異議を唱える。

「これまで、さまざまな経験が並ぶ履歴書を見たとき、多くの人は『うーん、落ち着きがないな。仕事が続かない。やり遂げられない』と言ってきたと思う。でも、その見方を変える必要がある」

問うべき核心はこうだ。「なぜその人はそんなに頻繁に変わっているのか。ひょっとすると、その人は適応力が非常に高く、曖昧さへの耐性も高いのかもしれない。組織に入って、学習がホッケースティックのように急上昇し、飽きてしまうのかもしれない」

若い候補者については、複数の学位、とりわけ関心領域の幅を示すもの——ビジネスと心理学、工学と演劇——に注目すべきだとロス氏は言う。あるいは、海外で生活した経験があり、複数の言語を話す人も該当する。

「複数の角度から問題にアプローチできる人を探すのだ」とロス氏は言う。「まったく異なる枠組みを引き出して問題を解く人である」

それを裏づける堅実な研究もある。米国科学アカデミー紀要に掲載された、長く引用されてきた研究は、能力が最も高いが同質的な思考者で構成された集団よりも、多様な問題解決者で構成された集団のほうが優れた成果を出し得ることを示した。多様な視点が、検討される解の範囲を広げるためである。

グローバル経験に関する研究も、多文化リーダーシップについて同様の図式を描く。MITスローン経営大学院の研究によれば、異なる国で生活・勤務するなど多文化的な経験を持つリーダーは、より効果的にコミュニケーションを取り、多様なチームに合わせてスタイルを適応させ、チームを率いる際により高いパフォーマンスを発揮する傾向がある。

ロス氏も同意する。

「若い頃に引っ越しを重ねた人、もしかすると別の国から移り住んだ人もいるだろう。そういう人は同じ問題を異なる視点から見ることができる」と彼は言う。

これは気分の良い話にとどまらない。相互接続が進んだ経済のもとでは、ばらばらの視点を統合し、曖昧さを乗りこなせるリーダーほど、より良い解を引き出し、大規模環境でもより速く適応する傾向がある。

規律としての適応力を鍛える

ロス氏にとって適応力は性格特性ではない。訓練可能なスキルであり、組織と個人が意図的に強化できるものだ。

「役割を掲げるのではなく、課題を掲げよ」と彼は言う。「『毎日来て、出勤打刻して、この3つをやる』という職務記述書は、もはや掲載する価値がない。もっと役に立つのは、その仕事で候補者が取り組むことになる課題を記述することだ」

変化は微妙だが、影響は大きい。固定的な責任ではなく、変化する問題を中心に仕事を設計する。そうすれば、より適応力の高い応募者を惹きつけるだけでなく、現職の従業員にもこの新しい考え方を身につけさせることになる。

個人レベルでは、筋肉を鍛えるように適応力を構築することを勧める。「毎日同じ道で通勤しているなら、違う方向にしてみる。歯を反対の手で磨いてみる」。経営層では、この原理を拡張できる。「経営チームで毎週会議をしているなら、みんな同じ椅子に座っているはずだ。少し変えてみる。別の場所で会議をする、屋外で会議をする、歩きながら会議をするなど、変化を強いる」

こうした練習は小手先の工夫ではない。不確実性への耐性を高めるための認知的コンディショニングであり、小さな攪乱によって不確実性への居心地の悪さを和らげる。

さらに根本的には、ロス氏は適応力を知的謙虚さと結びつける。「この5年で何を学んだか。この5年で何について考えを変えたか。自分自身や採用候補者に投げかける問いとして、とても興味深い」

彼自身のキャリアもその哲学を体現している。金融法からマッキンゼーへ、小売企業の経営幹部へ、そしてリーダーシップコンサルタントへと、彼は繰り返し舞台を移してきた。

しかし彼でさえ、持続的な適応には釣り合いが必要だと認める。「多くのことと同じで、まったく違うスピードでゲームをプレーできなければならない。私がこれだけ変化志向でいられるのは、人生の別の部分に安定があるからでもある」

ロス氏の枠組みでは、適応力は混沌ではない。構造化された不快感である。意図的に実践し、安定に支えられ、時間とともに強化されていくものだ。

AIという要素

そして適応力を語るうえで、現代の職場を大きく変える要因の1つであるAIに触れないのは不自然だろう。

「仕事でAIを使うか? 常に使っています。AIを使うことはもはや選択肢ではない」とロス氏は言い、エゴンゼンダーやマッキンゼー・アンド・カンパニーのような企業が採用プロセスでAIの能力を評価し始めていることを挙げる。

「日々の働き方や仕事内容という意味では、技術変化がすべてだ」とロス氏は語る。この姿勢は、企業がAIを知識へのアクセス、調査、統合のプロセスに組み込み、コンサルティングやコーポレートのワークフローが変わりつつあるという、より広い変化も反映している。

結論

ロス氏の核心メッセージは、挑戦的であると同時に解放的でもある。「レジリエンスは、平常へ戻ることを前提にしている。しかし、もうそれは起きないと思う」

良いニュースもある。人間はそもそも、こうした環境に適応するようできている。

「人間であることの一部は、何らかの形で生産的であり、世界に対して自分を投じることだと思う。そして新しいことを学び、前進したいと思うのは、人類の自然な状態だ」と彼は言う。

変化の加速が続くかどうかが問題ではない。続く。問題は、波に向かって身をかがめて耐えるのか、それともサーフボードをつかんで、次にどこへ連れて行かれるにせよ波に乗るのか、ということだ。

forbes.com 原文

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