キャリア・教育

2026.03.20 15:15

元総理通訳に聞いた要人の「癖英語対策」と歴史の目撃、「通訳はファシリテート」の意味

黒川公晴氏(Learner's Learner代表、ミネルバ認定講師、元外務省所属外交官)

━━発言を整理したりトーンを調整したりと、当時から「ファシリテーター」のように、単に言葉を置き換える以上のことをされていたわけですね。現在はビジネスの現場へファシリテーターとして入ってもいますが、「ファシリテート」を定義するとしたら何でしょうか。

advertisement

黒川:基本はコミュニケーションを円滑に進めるための「媒介」です。コミュニケーションには、何かを決めること、意見を交換すること、あるいは互いを知り合うことなど、いろいろな目的があります。その目的に向けて、あるべき順番で、あるべきトーンの対話がなされるようにサポートすることです。

ファシリテーションというと、現場での議論をうまく「回す」イメージが先行しますが、準備段階からが勝負が始まります。どんなプレーヤーが来るのか、どんな利害があって、どんなことを言いたい人たちなのかを下調べし、目標に向けてどんなアクティビティをどんな順番でやり、どんな問いを投げかけるかを組み立てていく。

当日の振る舞いも意図的に変えます。自分がある程度存在感を出して、「この場はこういう目的の場です」ということを全員に理解させたうえで、意図した方向に誘導していくときもあれば、完全に手放して、沈黙の中で参加者が自分の思いを出してくるのをじっと待つという関わり方もあります。

advertisement

例えばミネルバのプログラムは学ぶ場なので、参加者にはとにかく話して頭を動かして汗をかいてもらわないといけません。そういった場では、どんどん発言者を当てていきます。一方で、「上司にこういう思いがあるけど言えていない」といった組織の中の話しにくい問題を扱う場では、ひたすら待ちます。10分ぐらい沈黙が続くこともあります。

━━ここまでお話を伺って、通訳もファシリテーションも根本は同じように思いました。

黒川:通訳の経験は今の仕事でファシリテーションするのに、確実に活きていると思います。相手が言おうとしていることの核を、リアルタイムに掴んでいく。考えや感情も含め、「この人はつまり、こういうことを言いたいのだろう」と瞬時に見極める力は、通訳でもファシリテーションでも共通して必要ですね。

SEE
ALSO

キャリア・教育 > リーダーシップ

元総理通訳が糸島で「適応型リーダーシップ」展開の理由。外交と組織の意外な接点


黒川公晴(くろかわ・きみはる)◎Learner's Learner代表、ミネルバ認定講師。外務省所属の外交官としてワシントンDC、イスラエル/パレスチナに駐在。2013年に帰国後は安倍晋三、菅義偉元首相の英語通訳を務める。2018年独立以降、コンサルタントとして国内外の企業の組織・人材開発を支援。リーダーシップ育成、ビジョン・バリュー策定、カルチャー変革、学習型組織作り、事業開発等のサポートを行う。2021年からは米国ミネルバと事業提携し、日本企業向けのリーダーシップ開発プログラム「Managing Complexity」を展開、自身も講師を務める。著書に『総理の通訳が語る─世界で戦うための英語戦略』(ジャパン・タイムズ刊)、『ミネルバ式 最先端リーダーシップ 不確実な時代に成果を出し続けるリーダーの18の思考習慣』(ディスカバー・トゥエンティワン刊)。

文=加藤智朗 取材・構成=石井節子 撮影=曽川拓哉

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事