リーダーシップ

2026.03.05 07:01

多くのリーダーが見落とすコミュニケーションギャップ──その埋め方

ジェイソン・リッチモンド(Ideal Outcomes社 創業者兼チーフ・カルチャー・オフィサー)。著書に『Culture Ignited: 5 Disciplines for Adaptive Leadership』。

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自分の弱点はコミュニケーションだと思っているリーダーに、私はこれまで一度も会ったことがない。しかし実際には、優先事項が曖昧で、意思決定が誤って理解され、優秀で有能なチームが「間違ったこと」に本気で取り組んでいる組織を、私は数多く見てきた。

ほとんどすべてのケースで、問題は戦略ではない。人材でもない。ましてコミットメントでもない。リーダーには明確に思えていたコミュニケーションが、組織の中を伝わるうちに、少しずつ意味を失っていくことが原因だった。

そのギャップこそが、勢いを静かに漏らしていく場所である。劇的な衝突ではなく、日々のすれ違いで。誰も確認しない思い込みで。リーダーの頭の中にしか存在しない「整合」で。時間がたつほど、そのコストは実行の遅れ、苛立ちの増大、常に忙しいのに本当の意味で足並みがそろっていないチームとして現れる。

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コミュニケーションは「ソフト」なリーダーシップスキルではない。構造の問題である。

データもそれを裏づけている。Project.coの調査では、回答者の63%が「社内のコミュニケーションが原因で時間を無駄にした」と答え、59%はコミュニケーション上の問題でメッセージを見落とし、43%はコミュニケーションの問題に起因する燃え尽き、ストレス、疲労に苦しんでいた。

人的な損失も同様に深刻だ。USCアネンバーグ・スクール・フォー・コミュニケーション&ジャーナリズムがStaffbaseと共同で実施した調査では、「転職を検討している従業員の61%が、社内コミュニケーションの悪さを要因として挙げ、そのうち26%は主要因だと答えた」とされている。さらに、調査対象のマネジャーの49%が、自社の目標を把握していないことを認めた。結論は明白だ。明確さと文脈が欠けると、苛立ちが積み重なり、人は別の場所を探し始める。

逆もまた真である。コミュニケーションがうまくいっている組織は、働きやすく「感じる」だけでなく、実際に業績も良い。ガートナーHRプラクティスのアドバイザリー部門VPであるイングリッド・ラマンによれば、「平均を上回る健全な変革導入を実現している組織は、前年比の売上成長率が2倍高い」という。そして、変革の導入はコミュニケーションと切り離せない。人は、理解できないもの、信頼できないもの、他者に説明できないものを導入しない。

コミュニケーションはリーダーシップの有効性を映すだけではない。それを生み出す。

では、コミュニケーションが一貫して「明確さ」を生むリーダーと、意図せず「ノイズ」を生むリーダーを分けるものは何か。スタートアップからFortune 500企業まで幅広い組織と仕事をしてきた経験から、繰り返し見られる5つの実践を紹介する。

1. 多くを語るのではなく、1つの明確なメッセージから始める

コミュニケーションの破綻は、リーダーが「明確にする」より「網羅する」ことを優先したときに起きやすい。背景、ニュアンス、注意書きは提示するが、肝心のメッセージに錨を下ろさない。

効果的なコミュニケーションはその逆である。あらゆる重要メッセージを、次の3つの問いに答える1文へと凝縮すべきだ。

・「何をするのか」

・「なぜ重要なのか」

・「あなたに何を求めるのか」

それ以外は、これらの問いへの答えを支えるためにあるべきだ。ギャラップの調査では、職場で何を期待されているかを理解している従業員ほど、エンゲージメントが高く、生産性も高いことが示されている。明確さは手戻りを減らし、曖昧さは手戻りを増幅させる。

リーダーへの示唆:あなたのメッセージが、他者によって1文で正確に言い直せないなら、まだ準備が整っていない。

2. 明確さは「管理」ではなく「親切」だと捉える

明確に言い切ることにためらうリーダーは多い。硬直的、権威的に聞こえるのではないかと心配するからだ。だが実際には、私は「曖昧さ」のほうが「決断」よりもはるかに不安を生むことが多いと学んできた。研究者で作家のブレネー・ブラウンが言うように、「明確であることは親切。明確でないことは不親切」である。

期待値が曖昧だと、人は自分で空白を埋めようとし、たいてい間違える。明確なコミュニケーションは、過度な勘ぐり、社内政治、不要なエスカレーションを減らすうえで重要だ。

リーダーへの示唆:指示を出した後に「どう聞こえた?」と尋ねる。答えが食い違うなら、まだ整合は取れていない。

3. 一方的に発信するのではなく、ループを閉じる

一部のリーダーは「オープンループ」でコミュニケーションする。決定事項を発表し、理解されたと決め込む。しかし私の経験では、高い成果を出す組織はそう動かない。メッセージを送り、確認し、補強し、責任に結びつける「クローズドループ」のコミュニケーションを用いる。このアプローチが、航空や医療のような高信頼性環境で標準になっているのは、曖昧さがリスクを生むからだ。ビジネスも例外ではない。

リーダーへの示唆:重要な取り組みごとに、オーナーシップ、意思決定権限、成功指標、次の確認ポイントを明示的に文書化すること。オーナーシップなきコミュニケーションは、ただのノイズである。

4. 聞くことを「成果の道具」として使う

リーダーは往々にして、コミュニケーションを改善するとは「より明確に話す」ことだと考える。それも重要だが、実務では最大の改善が「よりよく聞くこと」から生まれる場合が多い。真に耳を傾けてもらえていると感じる従業員は、エンゲージメントが高く、コミットメントも強く、リスクを早期に指摘しやすい傾向がある。傾聴は意思決定の質を上げ、実行に入る前に納得感をつくる。

傾聴は合意形成を意味しない。決める前に理解するということだ。

リーダーへの示唆:変化や緊張の局面では、チームにこう問う。「何が不明確か」「何が懸念か」「何が破綻しそうか」。そのうえで、聞いた内容と、それをどう扱うかを言葉にして返す。

5. 指示だけでなく、文脈を提供する

私は、人が失敗するのは指示を聞き漏らしたからではないことが多いと学んできた。失敗するのは、なぜその指示が重要なのかを理解していないからである。リーダーがタスクだけでなく、トレードオフ、優先順位、理由を説明すると、従業員はよりレジリエントになり、エンゲージメントも高まりやすい。

文脈は、遵守をコミットメントへ変える。リチャード・ブランソンが言うように、「効果的にコミュニケーションできることは、あらゆるリーダーが持ちうる最も重要なスキルである。それは、人が世界やあなたの会社をどう見るかを形づくる」。実務では、そのスキルはカリスマ性というより規律に近い。何を強調するかを選び、それを一貫して強化することだ。

リーダーへの示唆:定期的なコミュニケーションを、次の3点だけで組み立てる。「いま重要なこと」「変わったこと」「支援が必要な領域」。

結論

コミュニケーションは性格特性ではない。リーダーシップのシステムである。機能すれば、意思決定は速くなり、信頼は深まり、実行は研ぎ澄まされる。機能しなければ、無駄な努力、停滞する取り組み、そして最終的には人材流出という形で損害が現れる。

自分はコミュニケーションが得意だと決めつけないことだ。明確さを設計し、理解を検証し、コミュニケーションを戦略そのものと同じ厳密さで扱ってほしい。

forbes.com 原文

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