教育

2026.03.04 20:11

教育の未来を守る5つの方法──AI時代の教室を立て直すには

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「何年もの間、自動運転車やAIによる放射線画像の読影、機械がプログラマーを置き換えるといった経済の混乱についての予測を聞いてきた。それでも雇用市場は崩壊しなかった」と、カーン・アカデミーの創設者兼CEOであるサル・カーンは、インタビューで筆者に語った。「この小康状態が、未来は過去と同じ姿のままだと思い込ませてきた。もし違うとしたら?」

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カーンは12月のニューヨーク・タイムズの寄稿記事でも、AI主導の「雇用の黙示録」について同様の主張を展開した。筆者が最近書いたSaaSの崩壊に関する記事や、Othersideの共同創業者兼CEOであるマット・シューマーの拡散したエッセイ「Something Big Is Happening」(のちにFortune向けに改稿)を読んだ人なら、彼の警鐘にも一理あると感じるだろう。その中でシューマーはこう告白している。「私はもう、自分の仕事の実際の技術作業に必要とされていない。作ってほしいものを平易な英語で説明すると、それがただ……現れる。修正が必要な下書きではない。完成品だ」

雇用市場が本当に破滅するかどうかはともかく、はっきりしているのは、昨日までの教育モデルが日を追うごとに著しく時代遅れになっていることだ。2008年に、登録ユーザーが約2億人に達する無料の非営利学習サービスを立ち上げ、さらに近年はAI搭載の家庭教師兼ティーチング・アシスタント「Khanmigo」も提供する起業家として、カーンの洞察はまさにいま必要とされている。

ここからは、前例のないAI時代に向き合うために、明日の学校が「譲れない」とみなすべき5つの優先事項を紹介する。カーンが筆者に語ったように、「希望は戦略ではない。子どもたちの世界が安定したままだと仮定して準備を続けるなら、私たちは彼らの大人としての人生を賭けの対象にしていることになる」

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優先事項1:基礎を徹底する

AIがオデュッセイアを一語一句暗唱し、しかもハルシネーションのない引用付きで10ページの分析を書けるとしても、それを理由に子どもたちが基礎を自分のものにする責任から免れるべきではない。「変化する雇用市場においても、社会は強い批判的思考力と一般教養に依存し続ける」とカーンは語る。

数学、読解、文章作成、人文科学、科学が時代遅れになることはない。むしろ、教育の基盤を備えているかどうかが、AIによって能力を増幅される側に回るのか、それとも置き換えられる側になるのかを分ける決定的な差になる。

長年、一部の教育者は成績の水増しやテスト対策中心の授業に圧力を感じ、識字率が低下し数学力が他国に追いつかない状況でも、生徒を次の学年へ「社会的進級」させてきた。破壊的な存在であるAIは、「よい成績を取れば学習の責任は終わり」という愚かな考えを打ち壊しつつある。責任は終わらないのだ。これから競争していくために必要なのは、実際の習得である。

優先事項2:蔓延する不正を直視する

Center for Democracy & Technologyの調査によれば、生成AIによる不正は2023-2024年度に58%から70%へ増加した。この大きな数字でさえ、問題の遍在性を過小評価している可能性がある。多くのAI検知プログラムが機能していないからだ。「AIを検知すると称するこうしたツールは、いんちき薬だ」とカーンは言う。彼は偽陽性率の高さを指摘しつつ、いわゆる「人間化」ツールが「AIが書いた文章を人間が書いたように見せることもできる」とも述べた。

解決策は、現実から目を背けることでも、さらに悪いことに、大規模な不正を新しい日常として受け入れることでもない。子どもたちを本気で考えるなら、そうしてはならない。必要なのは、優先事項1の徹底である。そのうえで、学習が教室の内外どちらで行われたにせよ、実際に学びが起きたかどうかを評価で見極めればよい。ブルーブック(試験用の青い冊子)を復活させ、対面での筆記や口頭試験の厳格さを取り戻し、リアルタイムで本物の力量を示させない理由はない。

優先事項3:書く力を徹底的に鍛える

「書くことは考えることだ。うまく書くとは、明晰に考えることだ。だからこそ難しい」。歴史家デイビッド・マッカローは、2002年に全米人文科学基金とのインタビューでこう語った。彼のより大きな主旨は、文章を書くことが脳を鍛えるという点にある。思考を紙面に外化することを学べば、考えを整理し、他者がどう受け取るかを省察できるようになる。

よい書き手は、よい読み手でもある。そして小説をよく読む人は、副次的な効果として共感といったEQのスキルを育むことが多い。これもAI時代における強みとなる。Scientific Americanによれば、「ニューヨーク市のニュースクールの研究者たちは、文芸小説が読者の『他者が何を考え、何を感じているか』を理解する能力を高めることを示す証拠を見いだした」という。

優先事項4:起業家的マインドセットを促進する

Quartzに寄稿したアリソン・シュレーガーは、20世紀の教育モデルの起源に光を当てている。「工場主は、従順で協調的な労働者、時間どおりに出勤し管理者の指示に従う労働者を必要としていた。教師のいる教室に一日中座っていることは、そのためのよい訓練だった」

それは過去の話だ。いまやAIが、職業を、場合によっては産業そのものを解体したり攪乱したりしている。生徒たちは、安定して高給のW-2の仕事を得るために「教育上の正しいチェック項目」をすべて満たしたというだけで繁栄できるとは期待できない。

「世界は、自分自身の主体性を引き受ける人のものになっていく」とカーンは言う。非営利組織の代表として、彼は「起業家的マインドセット」を広い意味で定義することに慎重だ。「すべての生徒が会社を立ち上げなければならないという意味ではない。資源を集め、独学し、実験し、市場に価値を提供する方法を見つけることを学ぶべきだという意味だ」

優先事項5:人間のスキルを重視する

数年前までなら、技術力は高いがコミュニケーションが苦手な学生でも、大学を出てよりよい企業環境へ進むことができた。この人物が社交的な雑談をする対人能力に欠けていたとしても、堅実な6桁台の仕事に就ける可能性は高かった。

なぜか。「コードを出力すること」が、多くの雇用主に評価されていたからだ。技術支援を求める企業が欲しいものを手にできる限り、態度の悪ささえ許容された。

その時代は終わった。「AIは生のアウトプットをますます担うようになる」とカーンは言う。「将来、人間が価値を持つのは、機械が容易に再現できないものだ。文脈、リーダーシップ、説得、共感、現実世界の理解である」

つまり、ソフトスキルが求められている。市場が報いるのは、顧客と(とりわけ対面で)会い、痛点を理解し、製品を売り、他者と連携して解決策を届けられる人だ。「相手の目を見て話す力、コミュニケーション、セールス、呼び方は何でもいいが、そうした力が今後の差別化要因になる」

先を見れば、誇張されたニュースがフィードにあふれるなか、将来に不安を抱くのも無理はない。ホラー作家H.P.ラヴクラフトはかつてこう書いた。「人類にとって最も古く最も強い感情は恐怖であり、最も古く最も強い恐怖の種類は未知への恐怖である」

しかし、苦境のただ中で機会を見いだすという希望ある記事の締めくくりとしては、ふさわしくないだろう。その感情に対しては、別の偉大な作家の言葉を参照するのがよい。ラルフ・ウォルドー・エマーソンは、明日を考える若者に必要な視点を示している。「この時代も、あらゆる時代と同じく、何をすべきかを知りさえすれば、きわめてよい時代である」

そして、そのために必要なのは、優先順位を正すことから始まる。

forbes.com 原文

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